本棚 : 「煽動者」 ジェフリー・ディーヴァー 著 ★★★ 文藝春秋
投稿者: hangontan 投稿日時: 2016-12-22 16:48:08 (371 ヒット)

原題は「SOLITUDE CREEK」、事件の最初の舞台となったナイトクラブの名前。本書の内容からすれば、邦題は極めてまとも、というより的確に過ぎる。作者が何故そのまともすぎる題名にしなかったのか、そこまで出版社は考えなかったのだろうか。

終盤にきてのどんでん返しは作者の得意とするところ。この作品では、それが全く読めなかった。しかも、そのどんでん返しが複数仕掛けられているのだから、うかつに彼の作品は読んではいけない。しかし、一見なんでもなさそうな会話や、描写、一つ一つその裏を考えていたら読むリズムが狂ってしまって、とてもミステリーを楽しむところではないだろう。ここは作者に騙される、いっぱい食わされた、ことを素直に認めよう。

気になった点が一つ。今回の主人公のキャサリン・ダンスといつもの主人公アメリア・サックスがだぶってしまうということ。二人とも強くて聡明で優秀な刑事という役どころとして描かれている。しぐさや得意とするところは違っていても、話の展開が定型的なので、主人公の印象も同じように感じてしまう。キャサリンとアメリアを入れ替えても、物語的な破綻はないだろう。明らかに色合いが違う作品になってないところが残念であった。

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