山の本 : 「ソロ」 笹本稜平 著 ★★★ 祥伝社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2017-9-12 11:48:17 (410 ヒット)

ローツェ南壁の単独登攀を目指す青年の物語。
トモ・チェセンのローツェ南壁単独登攀は当時の登山界において衝撃的だった。単独無酸素、しかも三日で達成なんて無理だ、不可能に近い。その信憑性について物議を醸し出した一大事件でもあった。
主人公はトモ・チェセンの手記を読んで感動し、彼のルートを辿ることによって、トモ・チェセンがなし得た偉業の証明をなし得たいと決意する。

物語は終盤にくるまで、とても長く冗長的な挿話が繰り広げられる。クーンブ山群やカラコルムの峰々の描写はそこに行ったことのない読者にとってはちんぷんかんぷんだろう。逆に、実際にその山々に入ったことがあるものにとっては、そのときの思い出とだぶらせながら読み進むことが出来る。

主人公とトモ・チェセンとの出会いの中で、彼が山頂付近に残してきたハーケンのことが触れられる。そのハーケンがキーワードになるのかしら、と読み進めてきて、終盤のクライマックスで、やっぱりこんな「落ち」だったのかという結末だった。

物語の相当部分はストーリー性に欠けるが、終盤の臨場感に満ちた登攀シーンがこの物語を救ってくれた。

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