本棚 : 「忘れられた花園」ケイト・モートン 著 ★★★ 東京創元社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2017-12-24 9:50:04 (364 ヒット)

オーストラリアの作家の小説は初めてだ。

訳者あとがきによるとこの作品は『ゴシック・ロマンス』の範疇に入るらしい。ゴシック・ロマンスとは「18世紀半ばから19世紀初頭にかけてイギリスで流行した中世風ロマンスの一種」で「人里離れた古い城や大きな屋敷を舞台にした、おどろおどろしい雰囲気の怪奇小説っぽい恋愛小説」を意味するらしい。本作品には「おどろおどろしい雰囲気の怪奇小説」は当てはまらないにしても、大体の雰囲気はそれに合致している。

私は少女漫画を小説にアレンジしたという印象を受けた。演歌に男歌と女歌があるように、小説にも女小説と男小説があると思う。推理小説にしても男性作家と女性作家とではどこかしら漂う空気が違う。しいて言うならば、「凄み」が男性作家の方が勝っている。対して女性作家の方は繊細なシナリオを軸としている印象を受ける。というわけで、この作品は女小説の典型といえる。

冒頭から序盤にかけて、四世代にわたる物語が交互に語られ、登場人物同士の関係が混乱して幾たびも読み返す。そのうち第二世代と第四世代の二人の人物、祖母と孫の物語に収斂していくのだが、そこまでいくと話の筋が読めてくる。

題名となった「花園」はまさしく「人里離れた古い城や大きな屋敷」内にあって、「おぞましい事件があった」その場所にあり、二人によるルーツを探す旅から見えてくる一族に関わる数奇な物語が「ゴシック・ロマンス」というわけだ。

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