本棚 : 「あの本は読まれているか」ラーラ・プレスコット 著 ★★★★ 東京創元社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2020-7-12 11:36:13 (239 ヒット)

「アメリカ探偵作家クラブ主催のエドガー賞最優秀新人賞受賞。日本を含む30カ国以上での翻訳が決定し、2020年最高の話題作」とは知らずに手に取った一冊。
主題は二つ。「ドクトル・ジバゴ」誕生秘話とCIA勤務タイピストの給湯室話。
内容からいって、どちらかというと後者の方にウエイトがあると思うが、原題も「The Secrets We Kept」となっているし、邦題は前者に力点を置いている。

二つの物語ともとてもよくできていて、わくわくどきどきさせられる展開に引き込まれる。ところどころに出てくるウイットの効いた会話も見もの。ジバゴでは歴史の影をあぶり出し、「そうだったのか」とともにもう少し深く真相に迫ってみたいとの念に駆られる。著者であるパステルナークの身に危険が迫る中、母国語での出版がかなわず、最初の出版元となったイタリアの「フェルトリネッリ」についても興味がわく。

二つの主題の融合に成功しており、総合的な評価は高い。一度読んで二度おいしい作品だと思う。登場したタイピストのスピンアウトした物語を勝手に想像してしまった。

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