本棚 : 「叛鬼」伊東潤 著 ★★★ 講談社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2020-8-18 11:32:57 (233 ヒット)

「南総里見八犬伝」を読んだとき、いまいち時代背景が分からなかったので、その辺をもうちょっと掘り下げようとして、手に取った一冊。
南北朝の頃も複雑極まる時代だったが、室町後期はそれに輪をかけて混沌としていた時代だった。御所を取り巻く京都周辺の乱れのことは別に置くとして、関東では、古河公方、鎌倉公方、関東管領、山之内上杉、扇ケ谷上杉らが骨肉相食む争いを繰り広げていた。敵味方の入れ替わりが激しく日常茶飯事。節操も何もあったものじゃない。人も時代も大うねりの中、その乱れがどう収束してくかに興味が持たれるが、それは戦国時代まで待たねばならない。「南総里見八犬伝」はそこで起こった小さな戦から紬だされた、いわばスピンアウトした伝奇小説であった。
本作品の主人公長尾景信もまたその大きなうねりに翻弄された武将の一人。長尾家と上杉家との因縁の中に生き、この時代の一つの場面を切り開いた人。だがはやり、自分の中でのこの頃の時代認識が希薄なため、人物的にはよく描かれていると思う反面、どんな時代だったのか、そういう思いがどうしても頭からぬぐえなかった。そこで、以下の4冊を参考書として読み、おぼろげながらこの時代の輪郭を描くことができた、という次第。

「室町幕府と地方の社会」榎原雅治 著
「応仁の乱」呉座勇一 著
「観応の擾乱」亀田俊和 著
「越後上杉一族」花ケ前 盛明 著

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