本棚 : 「泣き虫弱虫諸葛孔明」全5巻 酒見賢一 著 ★★★ 文藝春秋
投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-2-4 10:47:39 (161 ヒット)

分厚い5巻。当初思っていたより読了まで時間がかかった。
私の「三国志」は吉川英治のそれで世界観はほぼ固まっていた。先だって、北方謙三のを手にしたとき、また別の三国志に出会った感があった。吉川英治のは劉備中心の構成で、故事もうまく活用されていて、多分多くの人はこの作品に感化され私と似たようなイメージを抱いていたのではないかと思う。それに対して、北方謙三作品は吉川英治「三国志」とは一線を画し、周瑜にかなりの重きを置いている。劉備は惨敗続きの弱小軍団に過ぎない。酒見賢一の本作品もどちらかと言えば、北方謙三に近いスタンスをとっている。劉備の終盤も淡々と描かれている。本作品の凄いのは、史実とその後に作られた三国志演義、そして「三国志」を深堀して、独自の三国志を再現している点にある。これまで多くの人がイメージとして抱いていたであろう「三国志」とは全く違った世界がそこにある。

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