本棚 : 「ローマで消えた女たち」ドーナート・カーリッジ 著 ★★★ 早川書房
投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-17 15:37:52 (119 ヒット)

前に読んだ「六人目の少女」も複雑だったが、この作品も頭がこんがらかるくらい手の込んだ物語展開だった。
最近読み込んでいる誉田哲也の作品の中に、政府高官の悪行をインターネット上で公開し、その犠牲となった家族のものがそれを閲覧しそれらに制裁を加える、というのがある。一見関連性のない殺人事件が、捜査の過程を経て、全体を俯瞰していくとそれが意図された事件だと判明してくる。本作品の手法はある意味それと似ている。あちこちで起こる殺人事件の関連性はなかなか見えてこない。誉田哲也の作品でインターネットに情報を暴露した影の首謀者の役割を果たしているのが本作品では教誨師という聖職者。罪を犯した者が教会に懺悔に赴くが、その告白内容を含めた個人情報は教会にデータとして蓄積される。その罪を法をもって裁くのではなく、教誨師は親戚縁者にそれを伝え戒めとして復習の機会を与えるというもの。その主題に二重に三重にひねりを加えているのだが、それを過剰演出と採るか面白みが増したと採るか、評価が分かれるところであろう。

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