本棚 : 「火の鳥 大地編 上・下」桜庭一樹 著 ★★★ 朝日新聞出版
投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-6-16 15:08:56 (134 ヒット)

図書館に行くたびに桜庭一樹の本を物色しているのだが、なかなか新刊が出てこない。久しぶりに新刊コーナーに立てかけてあったので即ゲット。

題名から、手塚治虫の漫画の焼き増しであることは想像できる。しかし、本家火の鳥には「大地編」はない。ウイキペディアによれば、シノプシス(構想・企画段階)のみで、作品には至らなかったとのこと。桜庭一樹はこのシノプシスをもとに、彼女得意のマジックリアリティーの世界を膨らませていった。

冒頭、登場人物の紹介が手塚治虫タッチの絵柄で紹介されている。しかし、これを見てしまうと、イメージというか先入観が先付けされてしまうので、あえて見ないで本文に入っていった。読了してからも見ていない。

舞台は日清戦争から始まる日本のドツボにハマる時代、中国奥深くに存在するという火の鳥を探す旅。「火の鳥効果」で時間の無限ループが発生し、そのたびに歴史が少しずつ書き換えられていく。なんだかキツネにつままれているような感じ。その、騙すような、そうでないような、微妙なストーリー展開が作者の真骨頂。個人の都合で歴史が変わっていいの?という素朴な疑問がわくが、それが本作品の一つのテーマにもなっている。

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