山の本 : 「K2 苦難の道程」出利葉義次 著 ★★★★ 東海大学出版会
投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-1-18 18:54:03 (102 ヒット)

最近気になっているK2。
以前読んだ、日本初のK2女性サミッター、小松由佳の著書ではK2登頂の部分はさらっと触れられているだけで、その遠征隊のことがとても気になっていた。当然、大成功に終わった遠征記録は出されているだろうと、探し当てたのがこの一冊。今の時代、キーワードを打ち込めば簡単に検索できる。遠征隊の公式記録集は別に出版されているが、本著はK2遠征を振り返って、隊長が記した随筆みたいようなもの。
2006年、東海大学山岳部は創部50年の節目としてK2に登山隊を送った。そのとき、日本人初の女性サミッターとなった小松由佳は23歳、そして世界最年少登頂者となった青木達哉は22歳。決してヒマラヤ経験が豊富でない二人の登頂は大快挙と言える。本書では、その登山隊結成から登頂に至るまでの、文字通り「苦難の道程」が隊長の個人的目線で描かれている。文章使いは本家ノンフィクション作家には及ばないが、その時々での隊長としての思いが十二分に伝わってくる。二人がアタックに出てから登頂、そしてベースキャンプに戻るまでの克明な描写は、そのときの著者の鼓動が伝わって来そうなほど胸を打たれた場面であった。

著作権の関係からなのか、絵図や写真が一つもないのが残念であった。

印刷用ページ このニュースを友達に送る