本棚 : 「幕末三國志」斎藤一男 著 ★★★★ 論創社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-6-6 15:43:11 (78 ヒット)

日本史の中では、いわゆる戦国時代が群雄割拠した三国志的な印象があった。しかし、江戸時代末期から明治維新にかけては、それに優るとも劣らない三国志があったといっても過言ではない。まず、テンポが格段に速い。今日明日の動き、決断が未来の日本を決める。その時間軸上にそれぞれの藩と勇士が落としどころを求めて蠢いている。そしてそれは怒涛の勢いとなって見事に新時代の幕開けへと収斂されていく。しかも、戦国時代には無かったものすごい外圧がかかっている。もはや死に体となっていた幕府だが、それに対して着実に手を打っており、これもまた新時代への一つの流れとなっていった。
本書はその中でも、主に鍋島藩の動きに軸を置いて描かれている。また、作者が歴史学者ではなく、かつて日本登山界の重鎮であり、あの山学同志会を率いていた第一級の登山家であることにも興味がもたれる。幕末から明治維新の概要について知るにはうってつけの書だと思う。

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