極上の娯楽作品に出会うことも本読みの醍醐味、この作品にはそんな言葉が当てはまる。冒頭、漫画風の乗りでぐいぐいと引き込まれていく。次第に風刺のきいたテーマが入り込んできて、一時の浅田次郎を彷彿させる物語展開。「悪もん対いいもん」の単純な構造かと思いきや、複雑なスパイ戦と情報戦を呈してくる。天使役の「マリア」も登場するが、浅田次郎プラスアルファとしてはやや類型的な展開となったのはちょっと残念。