本棚 : 「わたしの名は紅」オルハン・パムク 著 ★★★★★ 藤原書店
投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-9-24 5:37:21 (75 ヒット)

図書館をぶらついていて、初めてトルコ人による本を手に取った。イスラムを背景とした小説としても初めて。ウンベルト・エーコ以来、このところ宗教を題材とした作品に惹かれる。ヨーロッパからトルコ、ペルシャの歴史を語るとき、宗教なくして成り立たない気がする。

オスマン・トルコのスルタンに仕える細密画の職人集団の物語。語り手が次々と変わる構成は作品に入り込むまでかなり苦労する作品が多いが、この作品はそんなことはなく、歴史的、宗教的素地がなくても、わりあいすんなりと入っていける。謎解きの要素も手伝ってか、ぐいぐいと引き込まれ読ませてくれる。

主題となっている伝統のトルコ細密画、何十年と描き続けた職人は、目を酷使するため、しまいには盲目になる人もいたとか。そして、それこそが、名人の証として尊ばれたという。そうまでして描かれた細密画とはいったいどんな絵なのか、とても興味のあるところではある。

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