本棚 : 「プーチニズム 報道されないロシアの現実」アンナ・ポリトコフスカヤ 著 ★★★ NHK出版
投稿者: hangontan 投稿日時: 2023-4-26 10:03:31 (53 ヒット)

現代ロシア関連の本三冊目。いずれもインタビュー形式で、市民の生の声を通して、今のロシアを伝えようとしている。先に読んだ2冊も信じられないような話ばかりだったが、本書はさらに度を増して、本当にこんなことが起こっているのかと勘繰りたくなるような、ゲスなロシアの現実ばかり。100年前ツァーリからの解放を勝ち取ったロシア革命の後も、30年前ソ連崩壊の後も、庶民の不満と混乱、混迷はさして変わらないように思える。

ソ連が崩壊し、新生ロシアが生まれたものの、官僚体制はソ連当時のものを引き継ぐしかなく、KGBもFSBを初めいくつかの派生組織となって生き残り、その影響と支配力はソ連時代となんら変わりはない。旧態依然とした官僚と元KGBに繋がった者だけが、新生ロシアの恩恵を受けることがでる。つまり、資本家と官僚と軍とマフィアの癒着。それが敵の排除という形になって現れ、闇の支配が市民生活を覆っている。さらに、それを見て見ぬふりをする国家。元KGB出身のプーチン体制はそんな背景がある。はたして、これを「壊す」者が次に現れるのか、たとえそうなっても、また更なる混迷が待っているのか。さっぱり、わからない。

邦訳の仕方にも問題があるのだろうが、やたら「イデオロギー」という言葉が出てきて、気になった。

印刷用ページ このニュースを友達に送る