本棚 : 「イタリアン・シューズ」ヘニング・マンケル 著 ★★★ 東京創元社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2023-6-6 17:26:09 (41 ヒット)

主人公が氷結した海を割って沐浴する、というかなり異質な場面から始まる。自分には全くそんな経験はないのだが、まるで遠い昔そんなことがあったかもしれないという、不思議な感覚を覚えた。主人公の行為に自分を重ね合わせて、俯瞰しているようにも思える。

主人公は世俗から隔絶した孤島に一人住んでいる。氷結した海で沐浴すること自体かなり変わった人物像を想像させるが、描かれている生活様式もそれに輪をかけて変わっている。冒頭で、そんな彼を描くことで、うまく読者を作品の中に引き込んでいる。
だが、物語が進むにつれて登場する人物は、もっと変わった人達ばかり。主人公だけがまともに思えることすらある。北欧のそしてスウェーデンの暮らしに、一風変わっているが、どっぷりと浸らせてくれた作品であった。

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