山の本 : 「ラダック 懐かしい未来」 ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ 著 ★★★★★ 山と渓谷社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-7 17:16:06 (600 ヒット)

一年かかってやっと読み終えた。
帯には「押し寄せる近代化と開発の波の中でヒマラヤの辺境はどこに向かうのか。ラダックに学ぶ環境と地域社会の未来」と記されている。
作者は言語人類学者なのだが、インド北部ラダックに入って「未来への道はひとつとは限らない」ことを確信する。モノカルチャーが全世界を多い尽くすことに対して警鐘を鳴らしている。モノカルチャーは文化の多様性を破壊してしまうからだ。お金とテクノロジーそして道が全てを変えて行く。市場経済の枠の外にあった辺境の地では、貧困という言葉は存在しなかった。開発が入り込んでからは、アンズの木で作られたバター入れはミルク缶の古いものとなり、一日3リットルしか乳を出さないヤクが、日に30リットルも出すジャージー牛に代わっている。
今自分の机の上には所狭しと物がのっている。すべてお金で買ったものだ。日本中、世界中のいたるところで同様の光景が見られることだろう。しかし、すぐにはこの生活からは脱しきれない。我々の何代か後にはまた文化の分散、多様性に戻る日がくるかもしれない。

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