山の本 : 「北陸産紙考」 上・下 高田長紀 著 ★★★ 財団法人 紙の博物館
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-12-10 6:22:02 (681 ヒット)

富山県朝日町蛭谷の和紙のことを調べたくて図書館に行ったが、思いのほか資料が少ない。それでも、なんとか探し当てたのがこの一冊。お目当ての蛭谷の和紙につては、記述は少ないが、知りたいことのおおよそはカバーされていた。「北陸産」ということだから、もちろん、他の和紙の産地についても触れられている。その中でも、特に興味をひかれたのが、八尾と利賀の和紙。富山の薬にも使われていた膏薬用の和紙のこと。利賀の和紙の成り立ち、と、福光の商人との深い関係。など。なにしろ、「産地に行っても、文書として残されているものは皆無に近い」という。古文書などを丁寧に読み拾い、そこから和紙に関する記述を抽出し、考察を加え、一つの本にまとめ上げたのだという。それは並大抵の作業ではない。大変な苦労があったのだろうと想像される。そのようにして出来上がった本書は貴重な資料であるとともに、読みながら和紙の産地を旅して歩いているような気分に浸らせてくれた。たまには、デジタルでない旅をしてみるのもいいものだ。

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