山旅 : 西穂高岳西尾根 2009・12・29〜31
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-12-26 17:24:14 (603 ヒット)



一年ぶりとなるお泊り年末山行、縦走は一昨年の5月以来。だんだん歳いってくっし、「これが最後の縦走かな」と思いつつ出かけることにした。

12/29 快晴 8:00 新穂駐車場 15:30 2200m
入山日としては申し分のないほどのド快晴、風もない。穂高平小屋裏の斜面は急なので、牧場を山際に沿ってしばらく進み、やや傾斜が緩やかになる支尾根から取り付く。誰でも考えることは同じとみえ、そこからトレースが続いていた。3人でトップを交代しながら1943mのピークまで。明日の昼頃には寒冷前線が通過し天候悪化が予想される。今日は進めるところまで進もうと、重荷にあえぎながら足をのばす。他の二人に飲んでもらおうと、酒2リットル持ち込んだのがあだになったようだ。そうでなくとも、瀕死の状態ながに。目指す2343mのピークまでは長かった。結局2200mで行動を打ち切る。時刻は15時30分。

今晩の献立:シャウエッセン2袋、アルファ米3人分、ボンカレー3袋、キュウリのキューちゃん1袋、松茸のお吸い物3袋、ビール、缶チューハイ、酒

12/30 高曇り〜曇り〜雪
6:00 2200m 11:00 西穂山頂 14:30 2200m 15:30
今朝の献立:讃岐うどん4玉、スープの素4、蒲鉾赤巻き1本、とろろこぶ少々、乾燥ネギ少々、乾燥大根葉少々、ナメコ1パック、キュウリのキューちゃん残り、カフェオレ
「讃岐より直送」とのふれ込みで仕入れたうどんだったが、普通の玉うどんとたいして変らなかった。少し高いがカトキチの冷凍うどんにしとけばよかった。                                                                        
テントから出てみると星が出ていない。天候の崩れは早いのか。午前中が勝負と踏み、テン場を後にする。目標は11時、西穂着。トレースがしっかりついており、最初からアイゼンで行く。昨日のようにKに先頭をきってもらうとバテバテになるのが見えていたので、自分のペースで先に行かせてもらうことにした。ゆっくり、ゆっくり。このペースは結局最後まで変らなく続く。1時間ちょっと歩いて、2343m、昨日目標としていたピークに着いた。テン場適地である。テント跡が3つ、4つあった。一旦下り、第一岩峰目指す。左手の潅木帯をひと登り、いつの間にか第二岩峰も過ぎていた。ジャンクションピークを過ぎると、岩と雪のミックスした快適な稜線歩きとなる。ここも一歩、一歩、息を整えながら行く。11時丁度、山頂に立つ。「ッシャー!」お決まりの雄叫び。去年はベースから空身で鹿島槍へのアタックだったが、あのときは体内に酸素が入っていかずとても苦しかった。まさしく死に物狂いで登頂を果たしたのだが、その苦しさから比べれば、今日の体調は悪くはない。八ヶ岳で傷めた捻挫の足首を気遣いながら登ってくるTと、それをフォローするKをしばし待つ。今のところ天候の崩れは思ったほどでもなく、視界は良好。明神からのぐるりと一周した景色は何度見ても素晴らしい。3人揃って、記念撮影。あとは下るだけ。この調子だと今日中にロープウエーに乗れるのではと算段する。だが、そうはいかなかった。

下りはトレースがバッチリでなんの心配もない。独標まで半分ほど来たあたりだろうか、後ろのKが叫んだ「やったじゃー!」。振り向くとKは下を向いている。Tの姿はない。続けさま「落ちたちゃー」とK。12時20分であった。Kの所まで戻り、下を覗くと、Tは30mほど下の深雪の斜面ですでに体制を整えていた。幸い、どこにも怪我はないようだ。元気な声も返ってくる。もう10m滑っていたら、樋状のルンゼから一気に沢筋に落ちてしまっていただろう。フカフカの深雪に助けられたのと、どこも強打したり、捻ったりしなかったことも運がよかった。Tは自力で這い上がり、途中からロープで空身のTを引き上げ、最後にザックを揚げた。足首の痛みを堪えながらの下りは、相当きつかったと見える。踏跡をはずし、安易に雪の中に怪我をした方の足を下ろしたのだが、そこがただの雪のたまり場だった。トレースのすぐわきを踏み抜いて、真っ逆さまに落ちていった。

稜線に上がってきたTは気分も落ち着いているようだ。どこも異常が無さそうなので、そのまま下山を続けることにした。独標の登りに差し掛かかる。岩場で勢いよく体を持ち上げた瞬間、被り気味の岩におでこを激しくぶつけた。火花が飛び散る。そのときは痛打したところの痛みだけだったが、これが後に災いを招くことになろうとは夢にも思わなかった。独標を下ったところから、天候が崩れ始め、風も強くなる。

14:00 小屋に着いた頃はすっかり荒天となっていた。我々は運が良かった。この悪天の中、西尾根を抜けきれずにいたらと思うと、ゾッとする。強風のためロープウエーが運行しているかどうか定かでなかったが、とりあえず行ける所までと、下山することにした。このまま雪が降り積もり、明日朝トレースが消えてしまう心配もあった。雪の樹林帯の下りは楽しい。無事縦走を果たした後のごほうびみたなものだ。が、Tの足が芳しくないようだ。痛みをこらえて下るのも限界にちかい。平らなところを見つけテン場とする。15:00 2200m地点。
さて、今晩は酒を消費しなければ。目標を達せられたことに乾杯。Tの無事帰還に乾杯。

今晩の献立:アルファ米3人分、キャベツ炒めの素1パック、キャベツ3人分、チキンナゲット大2個、松茸のお吸い物3、納豆3、缶チューハイ、酒

12/31 雪 7:00 2200m 8:30 ロープウエー駅
昨夜は雪が降り続いた。夜中に、Kはテント周りの除雪を2度行った。自分は、シュラフに潜った頃から、後頭部から首筋にかけて痛みが出始めた。寝返りを打つのもしんどいのだが、どの体勢でも同じこと。体を起こしていたほうがまだましだった。結局いつものように眠れぬまま朝を迎えることになる。

今朝の献立:アルファ米2、ちょっと雑炊3、乾燥大根葉、乾燥ネギ、切れてるチーズ(ブラックペッパー入り)、カフェオレ

一晩中降り続いた雪のため、昨日のトレースは9割がた埋まっていた。うっすらと残る痕跡を頼りにロープウェー目指す。8:30 駅に着く。9時始発のロープウェーに乗り込む。強風のためカーゴが揺れる。ケーブルの中間支柱にぶつかりそう。そのつどスピードを落として通過する。あまり味わいたくないスリリングな体験をして中間駅に到着。だが、ドックに入る寸前で強風が吹きまくり、ついにストップしてしまった。ここに来て、ユラユラ揺れるブランコのアトラクションに、KとTは大はしゃぎ。自分は、目が廻り、車酔い、船酔い状態。顔面蒼白、もう吐きそう、エチケット袋に顔を突っ込んでいた。うーん、最後にこれか。と、次の瞬間、カーゴが前進。無事駅に滑り込んだ。自分もセーフ。

ケーブルを乗り継いで、無事登山口に到着。車に積もった雪をはらって、いざ温泉に。行き先はいつもの「チロリ庵」。湯かげんも丁度よく、最高の湯。冷え切った体を湯に浸すと。体の細胞の一つ一つが息を吹き返すのを感じる。感激の湯。満足感と気持ちのいい余韻にひたりながら帰路につく。下山祝いは、大沢野の8番ラーメン。餃子とラーメンで腹ごなし。ここで、ずーっと頭から離れてなかった新年会についての決断を下す。山から下りて、皆と一杯やりながら新年の始まりとすることが楽しみだったのだ。随分前より、あちこちからリクエストも頂いていたのだが、その返事を今日の大晦日まで延ばしに、延ばしてきた。小生の都合により新年会は一年延期。ごめんちゃい。来年は今年の分まで楽しくやればいいではないか。乞う、ご期待。

で、首の痛みだが、正月2日になると、痛みは極値となり、もうどうすることもできなくなった。新年会は中止してよかったのかも。4日、たまらず近くの整形外科に駆け込んだ。診断は頚椎捻挫。交通事故のように首が前後に激しくしなるのとは違って、頭をぶつけたときに頚椎がひしゃげた格好になったのでは、との説明だった。痛み止めと筋弛緩剤を2週間分もらって帰宅。結局痛みが引いてきたのは8日あたりから。天気がよければ、山に入ろうと思っていたのだが、これを書いている12日までほぼ死に体の正月となってしまった。たまにしか行けない山、そのたんびに何かしらアクシデントが起きてしまう。それがまた怖くて一歩が踏み出せない。人生は砂時計、あと残された砂はほんのわずか。Kさん、T君、また、よろしく。

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