山旅 : 純白の八方尾根 2012/12/15〜16
投稿者: hangontan 投稿日時: 2012-12-18 6:47:21 (530 ヒット)









同行者:K、M嬢

12月15日 曇り 八方尾根1680まで
年末に山に入るとなれば、この辺で冬山の感覚を呼び戻して、足慣らしもしておかなければならないだろう。それと自分には確かめたいことがもう一つ・・・。

選挙の期日前投票を済ませ、13時に魚津でKと落ち合い白馬へと向かう。栂池でスキー訓練をしているM嬢を拾って八方に着いたのが15時をまわっていた。ゴンドラの最終便時刻が気になり、慌てて支度を整え、なんとか間に合ってゴンドラに乗り込むと一息ついた。ウサギ平からクワッドリフトへと乗り継いで1680地点に。この先の最終リフトはまだ稼働していない。時間も時間なので、スキー場から離れた緩斜面に向かい、テン場とした。

狭いながらも快適なテントの中。トレビアンなビーフシチューを肴にビールを飲んで、入山祝い。19時過ぎに早々とシュラフに潜り込んだ。一晩中吹きまくる風にテントははためき、しなりっぱなし、眠れない夜となった。

12月16日 晴れ 強風 P2361 往復 下山
風は強いがテントから覗くと星が瞬いている。眼下には白馬の街の灯りが、さながらおとぎの国のよう、メルヘンチック〜。昨晩の残りのビーフシチューとラーメンをかきこんで、いざ出発だ。6時20分。

テントを出てビックリ。Mは頭のてっぺんから爪先まで最新装備で身を固め、シャキーンと輝いている。BDヘルメット、ファイントラックの目出帽、シャインレッドのゴーグル、モンベルハードシェル、アウターパンツ、スボルティバのブーツ、BDのアイゼン、当然内側も高機能素材で身を包んでいる。それに比べて、Kと私の昔ながらのおじさんスタイル。時代の差を垣間見たひとこま。

最終リフト終点、スキー場トップまでワカン歩行。リフト降り場の脇にワカンをデポして、アイゼン装着。所々クラストした雪面をザック、ザックと進む。我々の前には誰もいない。ふり返ると白馬の街は湧いてきた雲に覆われ、スキー場まで上がって来ている。前方はまた、山の上部も雲に隠れている。だが、我々の前後300メートルの区間は全く雲がない、ド快晴の青空だ。

相変わらず風が強い。気温が低くないのが救いだ。ときより猛烈な吹き下ろしが登行を阻む。耐風姿勢をとって風の息を伺いながら進む。ゆっくりペースだが、息が上がる。ケルンの影で風を凌ぎ一本とる。

三人交代でトップを替わりながら行くが、自分がトップの方が歩きやすい。ゴボリと潜るラッセルがあっても、自分のペースが保てるからだ。二番、三番手だと追いつこうとするプレッシャーが息を乱してしまう。一歩進むたびに一呼吸、今はこれが最良の選択。高所の長丁場にも耐えられるリズムを見つけること、身につけること。それがこの一年間のテーマでもあったし、今回の山行きで確かめたかったこと。

体ごと持って行かれそうな強風にさらされながらも、好天に恵まれ、順調に足を延ばす。それにしても、八方の尾根はだだっぴろい。間違い尾根も、右に左に。ガスったり、吹雪模様では、とても行く気にはなれない、即撤退だろう。比較的緩やかな尾根ではあるが、冬の唐松岳は案外難しいと実感する。

カンバの疎林帯を過ぎると、丸山の登りにさしかかる。果敢に攻め入るMを制して、Kと私が登行にかかる。2ピッチで2361ピーク。ここから先はガスっていて、先が読めない。せめて丸山ケルンまではと思っていたが、ここから引き返すことにした。それでも未練たっぷりのMは上部目指し一人先を行ってしまう。「どうしたの?先に行かないの?」小首をかしげたゴーグル越しにMの気持ちが伝わって来る。

皮肉なもので、下山を開始してから30分くらいたってから、上部のガスが切れてきた。不帰の三本の尾根がクッキリと臨まれる。白馬岳から杓子、槍、不帰に連なる稜線が青空をバックに映える。「来たぞ、来たぞ!」心弾む絶頂のとき。丸山ケルンもガスの切れ間に見え隠れ。Kが終の山と決めている双子尾根。私も憧れている小日向のコル。はたしてMの心境はいかに。テン場までの一歩き、三者三様の想いを抱いて下っていった。

高差約700メートルを約4時間の登り、このペースならなんとかいけそうな感触だ。

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