山旅 : 山ノ神尾根から大日岳 2013/5/14
投稿者: hangontan 投稿日時: 2013-5-15 5:46:30 (1004 ヒット)

10日前、ほうほうのていで、逃げ帰って来た山ノ神尾根、そのリベンジのときが来た。

この数日間で山は随分と春がすすんだ。山ノ神尾根末端は雪がなく、とても取り付ける状態ではない。そこで前回下りに使った、1320に抜けるルンゼを利用しようと一ノ谷へと向かう。だがしかし、そのルンゼも上部の様子が分からず断念。どこか取り付ける雪渓がないか探しながら、デブリランドと化した一ノ谷を遡る。1300あたり、地形図では「一ノ谷」の「谷の字」付近で谷は二股に分かれる。といっても右が明らかな本流、左は狭い支谷。その左の谷を辿っていけば稜線付近まで雪がつながっていそうな気がする。しかし、その谷は茶色いデブリで覆われており、どうしたものかと考えてしまう。その支谷と尾根を挟んですぐ手前の浅いルンゼ状雪渓にも雪がたっぷり付いており、こちら真っ白で汚れていない。熊が遊んでいるところを見ると、安全な雪渓に違いないと判断し、こちらを辿ってみることにした。

このルンゼ、傾斜も程良く、足にもやさしい。200ほど登るとちょっとした草付きで進路を妨げられるが、そこを右へと乗っ越してビックリ。左手の主稜線に沿って、だだっ広い雪の斜面が上部へと続いている。まさしく天国への坂道、そんな表現がピッタシの雪渓が空へと向かっている。はたしてどこまで続くのやら、気分もよろしく足取りも軽い。そしてその雪渓を抜けたところが1763であった。末端尾根から取り付くのもよいが、このルートはこれとして、通常ルートとして使えるのではと感じた。春山はこれだからいい、雪のあるところを好きに歩けるからだ。

1763といえば前回体調不良のためウロウロしていた地点。今日はそんな気配は全くない。それどころか、クライマイーズハイが全身を包み込む。ひたすら雪の尾根を辿るというえも言われぬ感覚に酔いしれていた。途中雪が切れていてやわしいところもあったが、慎重に乗っ越し、二山、三山超えて主稜線に出た。勝利と達成の喜びを絞り出すようにして雄叫びをあげる。

一休みする間もなく大日岳へと足をのばす。眼前にそびえたつ剱岳を眺めながらのたおやかな稜線歩きを楽しんで、ライチョウが出迎える大日岳に到着した。

パンを一口ほおばり下山にかかる。早乙女を踏んでコット谷経由のルートも考えたが、あの快適な雪の斜面を駆け降りたくて、辿って来た山ノ神を下ることにした。楽しみにしていたその斜面は期待通りの雪具合い。飛ぶようにして下っていった。

ふり返ってみれば、この山ノ神尾根からの大日岳を夢見て十数年。冬山で三回挑戦し、三回とも敗退。その間、多くの仲間たちと同じ釜の飯を食い、同じ時間を共有した。そのことが自分にとってはかけがいのないものとなっている。冬は無理としても、春ならば可能だろう。そう考えて、今年5月4日単独でトライしたが、やはりダメだった。おそらく今年最後のトライとなるであろうこの日に登れたことは意義深い。今年の正月からの雪山歩きはこの日のためにあったと言っても過言ではない。それが達成されたのだ。勝利の喜び、達成の喜び、そして創意工夫の喜びの醍醐味を満喫できた、久々の会心の山となった。

今回使った一ノ谷1300の二股すぐ手前のルンゼは極めて快適なルートで、なんなく1763の主稜線に立てる。一ノ谷山ノ神ルンゼルートと名付けさてもらおう。

登り:小又橋から一ノ谷山ノ神ルンゼまで2時間、1763までが1時間半、主稜線までが1時間40分、大日岳まで1時間15分
下り:山頂から一ノ谷山ノ神ルンゼまで1時間半、小又橋まで1時間半

山ノ神尾根 1850まで 2013/5/4

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