本棚 : 「第四の手」 ジョン・アーヴィング 著 ★★★★ 新潮社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2014-1-7 17:46:37 (442 ヒット)

例えるなら、無邪気な幼子が絵を描いている姿を想像してみよう。そして、その子がそのまま大人になって、今度はその素直さの対象が女性になった、そんな憎めない色男の物語。
主人公はテレビの「二十四時間国際ニュース」の記者であり、アンカーマン。彼がインドで取材中、ライオンに左手を噛まれ、手首から先を食いちぎられるという不幸な出来事があった。その場面がそのまま放映され、彼は一躍注目を浴びることになる。そして、ふとした偶然から、手首から先の移植を受けることになり、彼は「第三の手」を得る。その間、冒頭からも、女好きの主人公の行きあたりばったりの漫才にも似た放蕩ぶりがページを埋め尽くす。

さて、問題は本の題名が「第四の手」ということ。はたして物語がどこで、どうやって「第四の手」と交わるのか、そこに興味がいく。そして作者はうまくそこに導いていく。

訳し方の影響もあるのだろうが、ジョン・アーヴィングの文章は平易でわかりやすい。話の伏線といったようなものはあまりない。なにも考えずに、すらすらと思いのまま書きつらねているという印象がある。内容も荒唐無稽なものが多い。本作品のように「不幸」な人物を描いているわりには、全然悲壮感を感じさせない。それどころか、心あたたまるものばかり。本作品をして訳者はあとがきで「艶笑コメディー」と述べているが、まさしくその表現がぴったりであろう。

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