本棚 : 「民王」 池井戸潤 著 ★★★★ ポプラ社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2014-1-9 18:56:40 (436 ヒット)

今回は抱腹絶倒爆笑コメディー。
張りつめた中にちょっとしたコーヒーブレイクのようなワンショットがたまにある、という硬派な作品ではない。それでも池井戸節は健在だ。世相、今回は政治、を風刺した喜劇を通して、登場人物に池井戸潤ならではの男の矜持を、人としての生き方を語らせている。

出だしは国会から。突然、ときの総理大臣とその放蕩息子の脳みそが入れ替わり妙な展開に。まぁ、そこまではどこにでもある話で、あれっと、思ったが、やっぱり池井戸潤は違った。あっちでも、こっちでも心を入れ替えられた国会議員が出始める。入れ替えられた双方の物語が同時進行していくものだから、頭の中がこんがらかってしまう。はたして、これはどっちだったっけ?

さて、主人公の総理大臣と出来の悪い息子。就職希望会社の面接で、方や国会で、心が入れ替わった二人が本音をさらけ出し、めちゃくちゃにしてしまう。これがまた笑わせてくれる、と同時にうならせてもくれる。あいかわらず鋭い切れ味。

ミステリー仕立てになってはいるが、謎解きとしての詰めは甘い。しかし、この作品では謎解き部分は本筋ではないので、それはご愛嬌といえよう。

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