本棚 : 「マグマ」真山仁 著 ★★★ 朝日新聞社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2014-1-16 19:58:59 (435 ヒット)

外資系ハゲタカファンドが破綻した九州の地熱開発会社の再生に乗り出す。原発の危うさを指摘し、地熱発電こそが将来の日本のエネルギー対策の礎となると唱える元原子力の専門家で今は地熱発電に命をかけている技術者とファンドから派遣された女性社長の物語。

初出は2005年とある。「ハゲタカ」が上梓されたその翌年に書かれている。そせいもあるのか、ファンドの「やり方」が実にうまく描かれている。なるほどと思いながらページをめくっていく。しかし、本作品は単なるファンドの企業買収劇にとどまらない。日本の原子力行政の裏側をひもときながら、原発が抱える諸問題にも触れ、地熱発電の基礎をレクチャーし、これからのエネルギー対策のあり方について考えさせ、しかも、物語全体には泥臭い人間ドラマが流れている。そう思うと、この作品はドラマハゲタカの遺伝子を受け継いでいるような気もする。

テーマがてんこ盛りにもかかわらず、コンパクトな作品に仕上がっていて、ちょうどよい読み加減であった。

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