本棚 : 大水滸伝の行く先は・・・「水滸伝」から「楊令伝」そして「岳飛伝」第8巻まで
投稿者: hangontan 投稿日時: 2014-5-16 20:17:10 (443 ヒット)



北方謙三の大水滸伝は「水滸伝」全19巻、「楊令伝」全15巻、そして「岳飛伝」第8巻まで来た。その前哨ともいえる「楊家将」上・下、「血涙」上・下を含めると合計46巻の超大作。今後「岳飛伝」がどこまでいくのかわからないが、シリーズ全作を一気読みするとなれば、かなりの量。大満足、大感動、腹いっぱい、間違いなし。できれば「楊家将」から順に読んでいきたい。

梁山泊はもともと、腐敗しきった宋という国を何とかしたい、という義勇兵と義民の集まりであった。個性的でカリスマ的な武人が次々に登場し、縦横無尽に活躍するさまは実に小気味いい。わくわくしながらページをめくっていって、あっというまに一冊読み終えてしまう。はたして梁山泊はどうなるのか、あの英傑の運命はいかに、と胸躍らせる、それは得も言われぬ本読みの醍醐味、リーダーズ・ハイ。

宋との戦いも、「楊令伝」前半で梁山泊最強ともいえる楊令の死で一幕を終える。その後南宋が興り、中華は金が支配するという構造になる。梁山泊は交易を通して基盤を盤石なものし、一方南宋も次第に地盤を固めていき、希代の将軍岳飛を切り捨て、新体制のもと、梁山泊と対峙していく。いったいいつになったら胸のすく大活劇がみられるのか、「楊令伝」後半からじらされっぱなし。

しかし、いよいよ「岳飛伝」第8巻になって、楊令の死後、膠着状態となっていた中華がまた動き出そうとする様相を呈してきた。来るべき戦に向けた金、南宋、梁山泊、それぞれの動向を描いて見せている。そういう意味では、「岳飛伝」第8巻は大水滸伝のフィナーレに向けた序章といってもいいかもしれない。

梁山泊において軍隊とは、侵略を目的としたものではなく、自由経済に国のあるべき姿を見出し、それが脅かされたときのためにある、とする。梁山泊が理想とする国家像は現代のどこかの国のそれと重なり合う。覇権を競い合う金と南宋が連合を組んで両者にとって最大の敵である梁山泊をつぶしに来るのか。一方では、北西から金を脅かしつつある元の動きも気になるところ。まさか大水滸伝に元が出張って来ることはないと思うが、今後の展開にどう影響をおよぼすのか興味は尽きない。手に汗にぎりつつ「岳飛伝」9巻を待つ。

印刷用ページ このニュースを友達に送る