本棚 : 「図書館の魔女」上・下 高田大介 著 ★★★★★★★ 講談社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2014-6-19 18:42:27 (490 ヒット)

上下併せて1450ページにも及ぶ大長編。
だが、その長さは少しも感じさせない。読んでいて、面白くて、楽しくて、終わりに近づくころには、なんともこの作品から離れがたく、もっともっとこの物語に浸っていたいという気分にさせられた。

題名から、最近読んだ「図書館戦争」と私の好きな魔女物(「魔女の刻」アン・ライス著)とダブらせて手にとった一冊。「魔女の刻」は妖艶でミステリアスな現代風の魔女の物語であったが、この作品は「魔女」という言葉から連想される魔術的な意味合いとは全く無縁の物語である。

一読みしてファンタジーを予見させるが、実はこの作品はファンタジーの名を借りた本格文学作品だ。仮想の国の「図書館の魔女」を主人公として、三国志やローマ帝国の興亡のような隣国間の権謀術数がくりひろげられる。だが、図書館の魔女が武器とするのは「言葉」。そしてその言葉こそがこの作品のテーマともなっている。漢文的で古語的な言葉と文章使いと現代風な口語調の言い回しが、簡潔でよどみない文章と併さって、妙な心地良さを覚える。物語の筋立て自体も並はずれたものがあるが、言葉と文章の力がまさしく魔術的な力をもって読み手を釘づけにしてしまう。

大ベストセラーの予感とともに社会現象になる可能性をも秘めている。

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