山の本 : 「相剋の森」 熊谷達也 著 ★★★ 集英社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2015-1-30 17:11:11 (521 ヒット)

「相剋」という言葉の意味をググッてみると、「対立・矛盾する二つのものが互いに相手に勝とうと争うこと」とある。

現代においてクマ狩りは許されるのか否か。

舞台は、新潟県の北端、山形県との県境に位置する岩船郡山北町の熊田集落。そこに生きるマタギに焦点をあて、それを取材する女性ライターの「相剋」を描いている。

主人公の相剋は読者の心の内でもある。クマを生きる糧とした時代はともかく、現代社会においてクマは必ずしもそういう位置づけにはない。そんな中でクマ狩りを続ける意味があるのか。害獣駆除の名の下においての狩猟はどこまでが許容されるか。そういうことを主人公と一体になって考えさせてくれる。

熊谷達也の他の作品同様、どうでもいい話にスペースが割かれている。骨のある主題に添えた味付けがいかにも安易すぎて、定型的。しかし、この作品ではその「ブレ」はまだましの方。それでもこの作品を星三つとしたのは、やはり主題の物語が勝っていたからだ。終盤で繰り広げられる熊田集落に伝統的に受け継がれている「巻き狩り」の場面は読み応え十分。クマを追って仕留める興奮と臨場感に浸る。

なぜ「クマを狩るのか」、それは理屈や言葉で表せるものではなく、そんなのはどうでもいいことのように思えてきた。

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