本棚 : 「コンタクト・ゾーン」篠田節子 著 ★★★ 毎日新聞社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2015-4-10 18:31:36 (563 ヒット)

フィリピン、マレーシア、インドネシアに近接する島嶼国テオマバル(架空)で、内戦に巻き込まれた日本人女性3人の奮闘ぶりを描く。

背景として本文には「モスレムの多い島ではあるが、中東などとは違い、インドネシアやマレーシア同様かそれ以上に現地化した、穏健なイスラムが信仰されている。その内容はイスラム布教以前からあったヒンドゥー教や、祖霊崇拝のアニミズムと融合しているケースも多く、戒律や生活習慣は、独自のものがある。また十六世紀になって入ってきたカトリック教徒や、その他の人々とも格別摩擦も起こさず共存している」とある。

リゾートホテルの襲撃から命からがら逃れ小舟で漂流して辿りついた行き先でのサバイバル劇のくだりからは、この本の題名も手伝って、なにやらミステリーっぽく、「LOST」の雰囲気満々。はたしてこの物語は「ゴサインタン」のようなファンタジーになっていくのか、はたまた「女たちのジハード」のようなしたたかな女性の奮闘記になっていくのか、しばらくは先が見えてこない。

そのうち、内戦にイスラム過激派の武装集団も登場してきて今世の中を騒がせているISが頭をよぎる。
内戦とまたそれに翻弄される島の人々との交流を通して、3人の女性一人ひとりがそれぞれの生き方を見出していく。

題名の「コンタクト・ゾーン」とは3人が訪れた島のことで、それが彼女らにとっての自分探しの接触点だった、という意味にとった。
篠田節子は女性の弱さ、しなやかさ、したたかさ、たくましさ、を描くのがとてもうまい。

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