本棚 : 「ゴースト・スナイパー」 ジェフリー・ディーヴァー 著 ★★★ 文藝春秋
投稿者: hangontan 投稿日時: 2015-8-31 17:47:51 (441 ヒット)

作者のデータ・マイニングをテーマとした作品が出されてから、まだいくらも経っていない。つねに旬なテーマで挑戦しなければ読者はついてこない。そんなあわただしい世の中になった。

今回のテーマは「ドローン」。今やハッキングとドローンとデータ・マイニングはテロリストと推理小説家にとっては必需品になった観がある。しかし、ただドローンや無人攻撃機を登場させただけでは目の肥えた読者は満足しないだろう。

今回の作品はその辺に苦労した跡が見うけられる。布石したいくつものプロットがあとから生きて来るように仕組まれている。データ・マイニングがこの手の小説では当たり前のこととなった今では、本作品においては空気を吸うがごとく捜査の基本中の基として扱われている。作者のデータ・マイニングをテーマとした作品を手にしたときは、これはすごいことになっている、と目から鱗の衝撃だったが、今では作品の中でさらりと描かれている。

確かに推理小説としてはよく出来ている。旬なテーマ探しもいいが、もう少し人間に趣をおいたずしりと重い作品を読んでみたい。作者の初期の頃の作品にはそれがあったような気がする。

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