本棚 : 「国を救った数学少女」 ヨナス・ヨナソン 著 ★★★★★ 西村書店
投稿者: hangontan 投稿日時: 2015-10-27 18:10:58 (448 ヒット)

スウェーデンの作家の作品はステーグ・ラーソンの「ミレニアム」以来。「ミレニアム」は至極のミステリーだった。それ故に、彼の次の作品を読んでみたかったのだが、ステーグ・ラーソンは「ミレニアム」執筆中に帰らぬ人となってしまった。

一方、この小説ははちゃめちゃコメディ。久しぶりにこんな作品に出逢った。浅田次郎の「きんぴか」以来かもしれない。ちょっとだけマジックリアリティの匂いがしないでもないが、全編、ユーモアと風刺にあふれ、一ページに一回以上は必ず笑わせてくれる。

1961年、南アフリカ生まれの少女、ノンベコが主人公。ちょっとお堅い題名だが、中身は「ノンベコと愉快な仲間たち」といったほうがふさわしい。スラムに育った少女に災難が次々と降りかかってくる。それもおバカな脇役たちが運んでくるのだが。ノンベコはその災難をさらりと福に転じて乗り越えていく。その小気味よさたるや、痛快そのもの。

作者はコメディに仕上げているが、扱っているテーマは人種差別問題、核兵器、君主政、ファシズム、共和制、共産主義と多岐にわたる。それらを「ノンベコと愉快な仲間たち」が繰り広げるドタバタ劇で表現している。

物語が始まってすぐ、学校にろくに通っていないノンベコが計算をやってのける場面が出てくる。95掛ける92を問う問題だ、これをノンベコが次のように計算する。この解の導き方がさっぱり分からなかった。

「95は100から5、92は100から8を引いた数でしょ。5と8を足して100から引くと87でしょ。そして5かける8は40でしょ。87と40で8740よ」

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