本棚 : 「蒼穹の昴」上・下 浅田次郎 著 ★★★★★ 講談社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2015-11-2 17:36:46 (481 ヒット)

再読。ユン・チアンの「西太后秘録」を読んでいて、数年前に読んだ浅田次郎の「蒼穹の昴」を思い出した。

いつか読む機会があるだろうと思って捨てられずにとってあった本の中の一つ。こんな巡り合わせでもなければ、もしかしたら永遠に読むこともなく、他の本同様、本棚に葬り去られてしまっていたかもしれない。

中国最期の王朝となった大清国を舞台にした物語。世界中で起こった歴史のダイナミズムは中国にも影を落とし始める。歴史というか時の流れの持つエネルギーにはたびたび驚かされる。その目に見えないエネルギーは、日本では様々な摩擦を生させながらも明治維新へと導いていく。一方、中国にあっては、アヘン戦争に始まる列強による干渉がじわじわと国をむしばみ始めて来て、長く続いた王朝による統治も終焉を迎えようとしていた。そんな避けようのない流れの中で、洋務運動から立憲君主制の擁立を模索し清王朝は延命を図ろうとする。そこに時代のエネルギーすべてを呑みこんだ西太后があって、彼女を軸とした内紛が物語の横軸となる。

そして物語の縦軸をなすのは、二人の幼馴染の男子の成長と彼らの運命の綾。片や、貧民の子として生まれながらも宦官となって西太后に引き立てられ少しずつ階段を上がっていき、仕舞には宦官として最高の位に上がる。片や、郷士の子として生まれ、科挙を主席で突破し、順調に官僚の階級を昇りつめる。

本作品は、この縦軸と横軸を見事に交差させて、スケールの大きなエンターテイメントに仕上がっている。

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