本棚 : 「キロ・クラス」 パトリック・ロビンソン 著 ★★★ 角川書店
投稿者: hangontan 投稿日時: 2016-2-20 17:52:26 (404 ヒット)

キロ・クラス潜水艦を描いた小説の第二作目。
前作「ニミッツクラス」で登場したキロ・クラス潜水艦を巡って、アメリカと中国が対峙する。
中国がキロ・クラスをロシアから購入し太平洋に配備する。それを脅威と感じたアメリカが新たなキロ・クラス配備前に破壊するという、やや強引な筋立て。なんで配備しただけの潜水艦を破壊するのか、ましてや運搬途中や、製造途中のものを闇に葬り去るという設定がどうにも納得できない。キロ・クラスを仕入れただけの中国は何も悪いことをしていない、そんな設定が唐突に思えるのは私だけではないようだ。事実、あとがきに、本作品の作者にアドバイスをしたというアメリカのジョン・ウッドワード提督は以下のように述べている。『本書でくりひろげられる事件は、はじめのうちは受け入れがたいかもしれない。七隻の潜水艦の納入を防ぐために、アメリカがロシアや中国に対してこのような行動をとることがありえるだろうか、という点がである』『浅く考えるなら、無鉄砲な過剰反応に見えるかもしれない。だが、熟慮すれば、さほど乱暴なことではなく、論理的であるとわかるはずである』

いくらなんでも、潜水艦を配備しただけでアメリカ善、中国悪、というこのシナリオは強引すぎるだろう。彼の国が準備中のロケットをそれが論理的だからといって脅威とみなし、アメリカが破壊することがあるだろうか。そんな行為にも等しい前提だから、かなりひっかかるものがある。

だが、その思いを途中で断ち切って、軍事ミステリーとして読むには快適な作品だと思う。

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