本棚 : 「カイコの紡ぐ嘘」上・下 ロバート・ガルブレイス 著 ★★★ 講談社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2016-4-22 15:08:56 (404 ヒット)

探偵コーモラン・ストライクシリーズ第二弾。
前作から比べると、筆力が数段アップしている印象を受ける。舞台が彼女のホームグラウンドである出版界というせいもあるのかもしれない。もっとも、あのハリー・ポッターの生みの親だから、乗ってくればこれくらいが当たり前なのか。

異色の作家の猟奇的殺人をめぐってコーモラン・ストライクが捜査を開始する。前作にも登場した助手のロビンとのかけ合いもよくできている。異色の作家が残した作品「ボンビックス・モリ」に焦点が当てられ、その出版をめぐっての事件との相を呈してくる。その内容は破廉恥で奇天烈きわまる。そこに登場する主人公もそうだが、殺された作家がジョン・アーウイングの作品に出てきそうな登場人物を彷彿させる。そう感じるのは私だけだろうか。荒唐無稽な人生観と妄想的なセックス願望で彩られた主人公は哀れで情けなく感じ、滑稽にさえ思える。猟奇的殺人事件でありながら、おどろおどろしさを感じさせないのはそのせいだと思う。

コーモラン・ストライクシリーズを二作手にしたが、方や芸能界、方や出版界、が舞台となっていて、どちらかといえばセレブでやや派手目な世界を描いている。サスペンスとしては庶民の生活から離れた華やかな舞台のほうが話題を呼ぶのかもしれない。だが、かのJ・K ローリングの作品でなかったら、はたしてベストセラー入りしたかどうか、はなはだ疑問である。彼女の作品だから読んでみようと思った読者が大半ではなかろうか。彼女の作品でなかったら、邦訳されていたどうかもわからない。私も彼女の作品として紹介されていたから興味がわいた。彼女は覆面で勝負したと言っているが、実際はそんなことできるわけもなく、ハリー・ポッターの作者の作品として読まれている。ならば、J・K ローリングの名前で出したほうがよかったのでなかと思う。探偵コーモラン・ストライク、シリーズ第二作目はなかなかの出来であるが、その点がややひっかかる。

印刷用ページ このニュースを友達に送る