山旅 : 早月尾根への道 2016/10/31
投稿者: hangontan 投稿日時: 2016-11-12 6:13:44 (426 ヒット)

夜明け前、剱岳の黒いシルエットに向かって車を走らせる。
澄みきった空にわずかに浮かぶ雲が山の向こう側からの光に照らされて赤く染まっていた。車を止め、三脚を立て、カメラをセッティングして、いざ撮ろうとしたら、その雲は引いていくところだった。とてもいい条件だっただけに、撮り損ねたショックは大きかった。瞬時にして変化していく自然はそれだからこそ尊いとも言えるのだが、いつでもすぐに対応しておく準備というか心構えが足りなかった。

さて、この時期に早月尾根を行くのは久しく記憶にない。再び早月尾根から剱に登ってみたい、という願望に取りつかれてから幾年経っただろうか。毎年残雪期には早月小屋まで行くのが恒例となっているが、そこから先は行かずじまい。そんなこんなでここ数年過ぎてしまった。

キノコ狩りがてら、ゆっくりと松尾平付近までの散策を決め込んだ。ただひたすら周囲を眺めることもなくもくもくと登下降に使ってきた早月尾根。そこを散策に行くということは10年前までは考えもしなかった。この間、体調の変化や老いやもろもろの変化が重なって、剱は登る山から眺める山になってしまっていた。

ひとたび山に入ってみると、驚きの連続だった。期待薄の紅葉は予想していたよりも数段よかったし、落ち葉の絨毯を敷きつめた道はとても気持ちがよかった。かつて通っていた道はこんなにも豊かな森だったのだ。たとえ頂を極めなくとも、この道を行くだけでも十分だ。運がよければ山の幸にもありつける。来年はかみさんと歩いてみたい、そんなことを考えながら馬場島を後にした。
























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