投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:42:23 (426 ヒット)

樫野直春 著 ★★ 駒草出版

くすりし、と読む。著者は造園技師でクアラルンプール在住とか。そこでの生活体験と専門分野の知識がいやおうなく発揮されている。富山医科薬科大の薬学部を出て富山の製薬メーカーに勤務した主人公。先祖代々薬屋の家系に生まれた彼は、新たな富山の薬の展開と可能性を求めてマレーシアに飛ぶ。古来より伝わる薬草の活かし方こそが富山の薬の真骨頂。海外で新しい薬草を見つけ、商品化にこぎつけるまでが彼の仕事だ。彼が提案した薬草は時代にマッチしたハーブとして受け入られ、次々にヒットする。情熱熱き一青年の青春譚として受け止めた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:41:54 (371 ヒット)

塩野七生 著 ★★ 新潮社
カルタゴに勝利してもローマに安泰の時期は来なかった。強敵は滅びても、依然として近隣との戦争は絶えなかったし、内部にも常に問題を抱えていた。農政、奴隷、軍隊を中心に様々な制度上のほころびが見え始めてきていた。制度上の欠点といえども、もともとから欠陥があったのではなく、時代の流れの中でそぐわなくなってしまうこともあるのだ。その度、対応する法律を作ってしのいできたのがローマ人だった。しかし、内憂外患がもたらす事象が複雑に絡み合あってついには内紛を起こしてしまう結果となる。それでも、ローマは外敵に対して攻め込まれることもなく、ポンペイウスの登場によってローマは再び力を結束し始める。と同時に地中海の覇権も磐石のものとなっていった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:41:26 (341 ヒット)

塩野七生 著 ★★★★★ 新潮社   

イタリアの統一後、ローマ同盟は次第に拡大していき、覇権はアフリカにまで及ぼうとしていた。しかし、そこに立ちはだかったのがカルタゴであり名将ハンニバルであった。数では圧倒的に上回るローマ同盟の軍団に対し、ハンニバルは独自の戦術で次々とこれを破っていく。ハンニバルはそれまで行われていた古典的な戦い方を変えてしまったのだ。さながら三国志の諸葛孔明をみているかのようだ。カンネの戦い、ザマの戦いなど歴史上有名な戦いが繰り広げられたのもこのときである。しかしながら、その時々に応じて優秀な人物を輩出するのがローマ人の凄いところ。ローマ陥落の一歩手前まで迫られながらこれを阻んだのが、若きスキピオだった。スキピオの登場によって趨勢は一変する。ハンニバル一人頼みのカルタゴに対して、幾たびの戦いを経て、ついにはスキピオを生み出したローマの底力の勝利ともいえる。3次に渡るポエニ戦役でカルタゴは完全に滅び、ローマは地中海の覇者への道を歩み始める。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:40:46 (393 ヒット)

宮部みゆき 著 ★★ 文藝春秋

宣伝の文句「模倣犯」のあの事件から9年・・・というのにつられて読んでみた。交通事故で亡くなった少年が残した絵、それは少年が接するはずのない事件の一風景であった。そこからどんなおぞましい事件に進展するのか、「模倣犯」の印象が強烈だったこともあって興味津々で読み始めた。「模倣犯」とどこか接点があるのかもしれない、そんな期待を抱いたのは私だけではないと思う。だがしかし、そんな思いは裏切られ(かってな思い込みだからしかたないか)、「えっ、これでおしまい?」という印象だけが残った。テーマ、スリル度、完成度、どれをとっても今一の作品。どうしてこうなったのか疑問だ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:40:10 (346 ヒット)

柳原慧 著 ★★★ 宝島社文庫

軽妙なタッチのミステリー。株式操作とハッキング、そして誘拐劇、一気に読んだ。なんとなく浅田次郎作品を彷彿させる登場人物がでてきて、それぞれの個性を出している。だが欲張りな作者はおぞましい悪役も登場させ、二つの雰囲気を融合させようと企てる。結果はそれぞれ8プラス2の割合でバランスよく仕上がっている。移動中の列車などで楽しむにはもってこいの一冊だ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:39:43 (411 ヒット)

宮尾登美子 著 ★★★ 中公文庫

新潟は亀田町の五千坪を持つ大地主が始めた酒蔵が舞台。ここでも逆境にもめげずけなげに懸命に生きる女性が登場し、宮尾節が光る。人物や四季の移ろい、家族の生きざまが日常の生活からそのまま切り取られて本の中に生きている。方言の違和感が少し残った。富山と新潟とではそんなに違いはないとの思い込みがそうさせたのかもしれない。普通の文体であっても十分にいけるのにと思うのだが、作者にはそれなりのこだわりがあるのだろう。毎日新聞に掲載され爆発的な反響があったという本書も他の例にもれず読み伝えたい作品の一つだ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:39:06 (336 ヒット)

マイクル・コーディ著 ★★★★ 徳間書店

キリストの復活を信じて永遠と引き継がれてきた秘密結社に、その予兆が告げられる。一方、人間の遺伝子の解析は完了し、ゲノムの全貌が明らかにされた。その結果、遺伝子治療はもとより、DNAから身体的特徴や病気の予測までが可能となる。不治の病を治すとはまさしく神の領域に通じ、キリストの復活劇と交差する。科学の発展は目覚しく、起こりえることがここに書かれている。そんな気がした。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:38:41 (289 ヒット)

ジョン・ダーントン著 ★★★ ソニー・マガジンズ

古代史からぷつりと消えてしまったネアンデルタール人の痕跡を解き明かせて見せる冒険小説。ウオルト・ベッカーの『リンク』と同じ主題だが、こちらの方がはるかにおもしろい。さすがピュリッツァー賞を受賞した著者だけのことはある。はるか昔、ネアンデルタール人はそれから進化した現人類の祖先との接触から次第に数を減らして行き、また生息の場を追われて次第に奥地へと追いやられてしまった。その子孫が今もなお人跡未踏の山奥に生きながらえている。彼らの消息を求めてヒマラヤに向かう主人公たち。謎解きのミステリー仕立ても申し分なく、質の高い作品に仕上がった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:38:13 (362 ヒット)

ウオルト・ベッカー著 ★★ 徳間書店

未だに解明されていないネアンデルタール人から現人類までの進化の過程を題材としている。インディ・ジョーンズを彷彿させる発掘劇と、そこにいかにも居そうな人類学者とパートナーの女性学者。現代技術では作りえない古代遺跡の発掘は、地球外生命体とのかかわりを示唆する。発想は単純でありえなくも無いのだが、物語の推理性、創造性に欠け、わくわく感が沸いてこない。B級冒険活劇。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:37:34 (350 ヒット)

デニス・ルヘイン著 ★★★ 早川書房

ボストン沖の孤島にある収容所が舞台。
物語がいくつもの線から編み上げられており、最初はそれに気がつかない。それが読書の思い描いた通りの話なのか、主人公の現実なのか、夢物語なのか、最後の最後に至ってもどっちなのかなと考えさせられる。おそらく多くの読者はそう感じているに違いない。秀逸なのは人物描写と登場人物がかわす会話の完成度の高さ。両方の切れ味だけでも十分に楽しめる。ミステリーとしてはよくできていると思う。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:36:55 (394 ヒット)

ジョー・ホルドマン 著 ★★ 早川書房

太平洋の深海で発見された謎の人工物の探査からこの物語は始まる。それはこれまでに発見されたどんな物質よりも重い謎の金属でできており、いかなるドリルやレーザーを使っても、構造を調べるどころか、傷ひとつつけることができなかった。この出だしからはハードなSFを連想させるが、実際はそうでもない。様々なもの、生物に擬態、変化できるエイリアンが登場し、僕の内に潜む変身願望をくすぐらせてくれる。その擬態の描写がユニークというか人間味あふれていて、微笑ましさすら覚える。ちょっとだけエロチックな部分もあり、あっという間に読めてしまう。B級SFノンストップ・アドベンチャー。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:36:24 (390 ヒット)

塩野七生 著 ★★★ 新潮社

「三国志」や「徳川家康」など、中国や日本の歴史小説はたまには読むが、ヨーロッパの歴史ものというと、そう多くはない。これは歴史小説というわけではないけれど、エンターテイメントの要素たっぷりの本である。もともと、自分にはローマの歴史知識というものはほとんど無く、ギリシャのそれと混合、混同していた部分も多分にある。そこのところを再認識させてくれたのが、自分にとってこの本の一番の功績。史実の羅列だけでなく、そのプロセスがウイットに富んだ文章で描かれている。歴史の教科書もこんな風なら授業も楽しいに違いない。本書は「ローマ人の物語」のほんの冒頭部分で、ローマの興隆とギリシャの衰退、それを比較することによってローマ人の価値観、人生観をうまく言い表している。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:35:51 (340 ヒット)

ラリーボンド 著 ★★ 文春文庫

第三次世界大戦が起こるとしたら、それはどこからか。フランスとドイツが手を組み欧州連合を結成しようとする。それも強引に。自らしかけたシナリオで事件を起こし、それに対して軍事介入することで覇権を示そうとする。戦争勃発の裏側にはよくある話だが、本著では、そのプロセスを細かくシュミレーションしている。だが、一つ一つのモチーフが強引というか、あまりにもありそうにもない話なので、やや白けてしまう。随所に見られる戦闘シーンも、ステレオタイプに描かれている。シュミレーションに徹した作品として割り切って読めばそうなのかもしれないが、小説としての面白みはない。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:34:34 (422 ヒット)

浅田次郎 著 ★★★ 講談社

自衛隊員の生活ぶりを垣間見させてくれた一冊。階級による縦社会とそれを補う人間味あふれた横社会。それがうまく描かれている。
なんの仕事も大変で、みんな頑張っているんだなと思ってしまう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:33:57 (388 ヒット)

京極夏彦 ★★ 講談社ノベルズ

このシリーズとしては不作の部類かな。殺人事件がバラバラにかつ連続して起きるのだが、その実それらはなんの脈略もないように思える。読み進むうちに本当にその通りになってくるから、おそろしい。ツマリ、別々の事件なのだ。ただ手法として面白いのは、一つの事件も視線の当て方によって別の事件に見えてしまうという描き方。登場人物はどこかに接点があるのだが、そのそれぞれが持つ世界が必ずしも彼らがすべて共有しているわけではない。その見え方のパラドックスを主題にしているのだと思う。だが、事件の落ちがあまりに軽すぎ。もう少し読ませてくれることを期待していただけに、残念。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:33:26 (416 ヒット)

ジャック・ライアンのすべてをかけたテロリストとの戦い。4巻からなる超長編はその長さを感じさせない。ただ、終盤になってから単なるチャンバラになってしまった。なにせ敵であるイスラム連合国軍が弱すぎる。いくつもの仕掛けと好モチーフが散りばめてあるのに、最後になって息が続かなくなってしまったのだろうか。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:32:48 (383 ヒット)

マイクル・クラントン ★★ 早川書房

元アメリカ副大統領アル・ゴア氏の「不都合な真実」という映画が話題になっているが、この「恐怖の存在」は彼の立場とは逆の視点から地球温暖化というものをとらえている。果たして地球温暖化は本当に起っているのか?そしてその原因は本当に二酸化炭素の排出過多からなのか。地球温暖化を唱えるのには何か裏があるのではないか。と常々思っていたが、マイクル・クラントンは綿密な取材の中からその点をあぶりだしている。本著は小説の語り口をとっているが、学術的データも豊富で、この問題を両方面から考えるよいテキストとも言える。はたしてゴア氏がどのくらいこの小説を意識していたかわからないが、参考にしたことは間違いないと思える。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:32:16 (374 ヒット)

ラリー・ボンド ★★ 文春文庫

再読。作者はトム・クランシーも一目を置くウォーゲームの第一人者。戦闘機のドックファイトシーンや白兵戦など個々の戦闘場面には秀でたものがある。が、物語の手腕ではトム・クランシーに一日の長がある。南北朝鮮非武装地帯の巨大トンネルで北側の武器や戦車が発見され、そこから始まる攻防。北側から送り込まれているスリーピングエイジェントの動き。新しく戦地に就くことになった新米少尉への期待感。など序盤は読ませてくれていたのだが、ストーリー展開は急速にダウン。単純な戦闘場面ばかりが多くなる。やたら死人が続出、戦闘機はいともたやすく撃墜され、とにかく北朝鮮軍が弱すぎる。昔タイプの日本の時代劇を見ているよう。序盤にちらついていたスリーパーエイジョントの影はいつの間にか消えてしまっていた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:31:42 (340 ヒット)

サイモン・シン 著 ★★★★★ 新潮社

これは面白い、快適だ。世界的ベストセラーとは後で知ったが、それも頷ける。
暗号といえば、第二次大戦中にドイツ、日本の暗号が傍受、解読されていて、Uボートの撃沈、ミッドウェーでの負け戦から連合国側勝利への足がかりとなった、ことぐらいしか頭にない。本書では古代ギリシャの時代から暗号が使われており、歴史上数々の場面において重要な役割を担ってきたことを伝えている。初期の頃、暗号はもっぱら文学的素養のある者が解読作業にあたっていた。しかし、だんだん複雑になってきて、コンピューターの出現、発達に伴い、数学者、物理学者、量子学者の出番が必然となってきた。昨今、代表的なネットツールのセキュリティ上の脆弱性が問題となっているが、これも暗号問題と微妙な係わりがある。アメリカは高度な暗号技術の輸出を国家安全対策の点から規制しており、それはより安全な暗号技術を輸出するネットツールに組み込めないことを意味する。
暗号の初歩から最新技術まで、わかりやくす解説してある。終盤では量子学から最先端の暗号技術について書いてあるのだが、これもこの手の分野には全くの素人にも分かったような気にさせる文章で書かれている。暗号の世界をあっという間に読み解いていく快感。実に楽しい。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:31:02 (554 ヒット)

ジェームズ・ミッチナー 著 上・中・下 ★★★★★ 河出書房新書

アメリカは西部開拓時代の物語。非常に長い、だが、一箇所も興味の薄れるところがない作品だ。スケールは大きく、地球の始まりから地殻変動、気候の変化、恐竜の話、馬の祖先の物語、などを交え次第に本作品の舞台、コロラドに焦点が絞られてくる。良書というにはピッタリの本であろう。
この本を初めて読んだのは20年以上前のこと。当時この本から受けたものは、コロラドへの憧れとそこで暮らしてみたいという、なにかしら西部開拓史の時代の人々が抱いた希望と似通ってた部分があったと思う。今読み直してみて気づいたのは、アメリカ人のというものに対する大局的な見方。イギリス、ドイツ、フランス、メキシコ、日本人がインディアンの住むこの地に入って来た。裸一貫で入ってきて、そこに暮らし、すべてのことは自分の責任においてやらなければならない。鉄砲を持ち馬に乗るようになったら、なにが起ころうと、そいつはそいつで解決しなければならない。野垂れ死にしようが、酒場で撃たれようが、それはそいつのことなのだ。飛行機で1時間も上空を飛んでもそこが一個人の所有になる牧場なんて、信じられないし想像もつかない。そこで飼われている牛もしかり、いったい何万頭の牛がいるのか、数えられるのか。小さな島国で単一民族からなる日本とはバックボーンが違いすぎる。昨今のBSE問題で日本はアメリカとさんざんもめているが、そういうふうに我々と違った背景を持つのだから仕方の無いことなのかなぁ、とも思わさせてくれた本書だった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:30:18 (436 ヒット)

中河与一 著 ★★ 新潮文庫

山の本の案内書にはこの作品が必ず出てくる。主人公のストイックな面が山屋に多く見られるそれとダブっているのかもしれない。話の中でも、主人公は見果てぬ恋の行く先として、薬師岳の麓にこもり、山の村で生活を営む。全体からすればわずかな記述なのだが、山に親しむもにとっては俄然と同調してしまう部分だ。様々な言語で訳され、40万部も売れたというから、海外での評価は相当高いらしい。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:29:04 (409 ヒット)

河合香織 著 ★★★ 新潮社

まったくの興味本位から手に取った。これまでタブー視されてきたというか、あまり触れられて来なかった、障害者の性とその介助。言われてみれば、自分にとっても認識の外にあって、そこだけぽっかりと穴のあいた領域であった。またまた自分の知らない世界を思い知らされたというのが率直な感想。介助とは言え、性的欲求を満たすためのお手伝いは、健常者のそれと区別できるものなのだろうか。介護者によるこの種の介助は、少なくはないとの話も聞く。普通の介助が表サービスなら、それを裏サービスとも云うのだそうだ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:28:20 (407 ヒット)

ジェフリー・ディーヴァー著 ★★★★★ 文藝春秋

四肢麻痺の科学捜査専門家リンカーン・ライムシリーズ、第2弾。第一作よりもパワーアップしている。前作はライム自身の四肢麻痺としての葛藤が読みどころの一つであった。サスペンス、ミステリーでありながら、人を描くのがうまい、これが皆に受けている理由ではなかろうか。今回も、悪役との攻防もさることながら、登場人物の人間模様が話の筋とうまく融合して描かれている。三作めが読みたくなる。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:27:54 (375 ヒット)

石田衣良 著 ★★★ 文藝春秋

今を映しだすのが作者は非常に得意だ。というより、今何がしたいか、そのまま作品にしているのだと思う。考えてばかりいては先に進まない。今の池袋、若者の断片をさらりと切り取っている(といっても、書かれた時期からしばらくたっているが)。もしかしたら、こんな奴らが本当にいるのかもしれない、それとも、こんなの小説の中だからだよ、と、そんなすれすれな線を漂わせてくれる。軽妙なタッチの文章は今風だ、第三の波の一派と目されるだけのことはある。あと20年後どう読まれのであろうか。しかし、作者にとってはそれはどうでもいいことなのかもしれない。今を語りたいのだから。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:27:17 (345 ヒット)

スティーヴン・キンク 著  ★★ 角川書店
これも困った。ついこの間読んだ「不眠症」よりなお変だ。 
ネット上の書評では比較的好印象の意見が多いのだが、みなさん本当にそう思っていらっしゃるのだろうか。自分にはハテナと感じてしまう。時空を超えた壮大なスケール?といえばそうなのだろうが、ピントを合わせようとすると、次の瞬間には、別の世界に飛んでしまっている。そんな繰り返しが最初から最後まで。謎解きならば最後に全ての脈絡が通じ合うのだが、ここではそうでもない。邦訳のせいもあるのだろうが、文学的表現の多い作品となっているのも、難解とさせている一因かもしれない。高行健の「霊山」を彷彿させる。今の場面と独白と回想のスクランブル。キングは若い頃こんなことも書きためてたんだろうかと思ってしまった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:26:43 (404 ヒット)

スティーヴン・キング 著 ★★  文藝春秋
キングの小説を読んでるとき、実生活とだぶっていることがある。「トミー・ノッカーズ」の場合、登場者らは特殊能力が備わってくると歯が抜けてしまうのだが、自分は前歯がかけてしまった。今度の作品でも、主人公は目覚めの時間が日に日に早くなり、眠れなくなってしまうのだが、この頃はどうも朝早く起きてしまい(4時過ぎ)、日中ボーっとしている日々が続いている。春になるとこうなってしまうのは、日の出が早くなってくることと関係があるのかもしれない。
上・下合わせて6千円もするこの本の価値は何なのだろうかと考えてしまった。眠れなくなってしまった老人が他人のオーラを感じ始め、それがきっかけとなり、いつのまにか悪との戦いへと向かっていく。上巻の終わり頃から話はエスパーの物語となり、急にその手の描写が増えだし、下巻の最後までひっぱっている。確かにキングでしか描けない世界なのだが、どうみても6千円の価値はないと思う。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:26:00 (383 ヒット)

パトリシア・コーンウエル 著 ★★★ 講談社文庫

検屍官ケイ・スカーペッタシリーズ、第3弾。毎日スカーペッタ局長は死体の解剖に大忙し、だが今回の連続殺人には肉がない。全て白骨化してから発見されている。しかもすべての死体はカップルで、靴を履いていなかった。3作目にして、ようやく話の筋に違和感がない仕上がりだ。犯人の出方も前2作ほど唐突な感じはない。だが、3作読んで、どれがどれだかさっぱり、思い出そうとしてもこんがらかって、頭の中は大変だ。ということは、3作とも似たような展開、登場人物の役どころと描き方も一緒、ということだ。しかし、まんねり、という表現とはちょっと違う。3作登とも場人物の名前だけを変えて、あと全て同にしたような、なんかそんな印象だ。こう感じるのは私だけだろうか。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:25:10 (389 ヒット)

パトリシア・コーンウエル 著 ★★ 講談社文庫

前作「検屍官」で一躍ベストセラー作家の仲間入りした作者だが、第二作目はややトーンダウン。捜査手法の描写、題材とその置き所はよくできていると思うのだが、全体としては不満。こじんまりとまとまっているはいるが、それだけで、深みが感じられない。サスペンスとして淡々と犯人を追って行くわけでもなく、登場人物の人間模様も今ひとつといった感じ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:24:41 (381 ヒット)

パトリシア・コーンウエル 著 ★★ 講談社文庫

1990年、米国でエドガー・アラン・ポー新人賞を受賞。直後に邦訳され、たちまちベストセラーに。女性検屍局長ケイ・スカーペッタが連続殺人事件に挑む。綿密な科学捜査、DNA鑑定、コンピューターハッキングなど、斬新なモチーフがてんこ盛りだが、話の筋はきわめてオーソドックス。しまいにはとんでもないところから犯人が出てきて、これにはがっかり。DNA鑑定も当時としては最先端の技術であったらしいのだが、結果が出るまでに2、3週間もかかっていた。しかも鑑定結果は犯人識別に対して今ほど決定的な基準とはなっていなかった。コンピューターハッキングにしても、当時と今とでは覚醒の感がある。人間をさほど描いたものではなく、こういった最新技術の導入によって大部分が構成される推理小説にはこのようなマイナス面が否めない(最初に読んだときは、なるほど、なるほどと感心しながら読んでいた)。今読んでおもしろくても、10年後、20年後、果たして鑑賞に値するか。この作品はそんなことを再認識させてくれた一冊だ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:24:06 (403 ヒット)

柴田錬三郎 著 ★★★ 新潮文庫

三国志ファンは多いと思うが、自分もその一人。吉川英治のは何度読んでもおもしろい。たまには違った作者ので、と、手に取ったのが本書。やっぱりおもしろい。「あの話はどうなった」「ははーん、そうだったのか」と両書を比較させながら読み進む。吉川英治のは八巻あり、終盤はやや長すぎたきらいがあったが、本書は三巻で、書くところはきっぱりと書き、てんぽも早い。孔明が出師の表をしたためたところで終わっているのも、これはこれですっきりとした終わり方だと思う。


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