投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:25:10 (389 ヒット)

パトリシア・コーンウエル 著 ★★ 講談社文庫

前作「検屍官」で一躍ベストセラー作家の仲間入りした作者だが、第二作目はややトーンダウン。捜査手法の描写、題材とその置き所はよくできていると思うのだが、全体としては不満。こじんまりとまとまっているはいるが、それだけで、深みが感じられない。サスペンスとして淡々と犯人を追って行くわけでもなく、登場人物の人間模様も今ひとつといった感じ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:24:41 (381 ヒット)

パトリシア・コーンウエル 著 ★★ 講談社文庫

1990年、米国でエドガー・アラン・ポー新人賞を受賞。直後に邦訳され、たちまちベストセラーに。女性検屍局長ケイ・スカーペッタが連続殺人事件に挑む。綿密な科学捜査、DNA鑑定、コンピューターハッキングなど、斬新なモチーフがてんこ盛りだが、話の筋はきわめてオーソドックス。しまいにはとんでもないところから犯人が出てきて、これにはがっかり。DNA鑑定も当時としては最先端の技術であったらしいのだが、結果が出るまでに2、3週間もかかっていた。しかも鑑定結果は犯人識別に対して今ほど決定的な基準とはなっていなかった。コンピューターハッキングにしても、当時と今とでは覚醒の感がある。人間をさほど描いたものではなく、こういった最新技術の導入によって大部分が構成される推理小説にはこのようなマイナス面が否めない(最初に読んだときは、なるほど、なるほどと感心しながら読んでいた)。今読んでおもしろくても、10年後、20年後、果たして鑑賞に値するか。この作品はそんなことを再認識させてくれた一冊だ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:24:06 (403 ヒット)

柴田錬三郎 著 ★★★ 新潮文庫

三国志ファンは多いと思うが、自分もその一人。吉川英治のは何度読んでもおもしろい。たまには違った作者ので、と、手に取ったのが本書。やっぱりおもしろい。「あの話はどうなった」「ははーん、そうだったのか」と両書を比較させながら読み進む。吉川英治のは八巻あり、終盤はやや長すぎたきらいがあったが、本書は三巻で、書くところはきっぱりと書き、てんぽも早い。孔明が出師の表をしたためたところで終わっているのも、これはこれですっきりとした終わり方だと思う。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:23:10 (416 ヒット)

梓林太郎 著 ★★★ 角川文庫 

山の本を探して当てもなく本屋を彷徨うことはよくある。本書もそんな中から見つけた一冊だった。昭和63年に出ている。当時はネットというものはなく、山の本を見つけるのも一苦労、というか偶然に出くわす場合がほとんど。だから、「あれ、こんなところにあったのか」と見つけたときの喜びはひとしお。梓林太郎は山岳ミステリーを数多く書いているが、その中でもこの作品は良くできている方だと思う。山に題材を追っていくと、だんだんネタ切れになっていき、書き出しだけが山に関することだけで、あとは下界に話が持ち込まれていくというパターンは多い。純粋に山だけに絞って書き込むのは、ミステリーとしては難しいものがあるのかもしれない。本書はわき道にそれることなく山での物語を描いている。B級であはるが、中の上の上、といったところだろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:22:15 (462 ヒット)

小笠原慧 著 ★★★ 角川書店 横溝正史賞受賞 
何気なく手にとった本。種の進化、医療、遺伝子サスペンス。人工授精と種の発生、そして染色体の話などには興味がそそられる。最近話題のES細胞なんていうのもでてくるので、ははん、とうなずく場面もある。ただ、肝心の人間が描ききれてなく、ストーリーも単純、偶然が多すぎる。読み応えのある作品とはけっして言えない。「横溝正史賞」とはどんな賞なのかなと、ふと思ったりする。
人生は偶然によるところが多分にある。生物の進化の歴史においても、偶然がその種の発生、生存に大きく関与してると思う。また、時間の流れというこれもまた掴みようのないものがそこにある。現代の人類にはない特徴をもって生まれた新しい人間の種が、どう種を残していくのか。そんなテーマを感じながら読むとまんざらB級とはいえないかも。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:25:07 (347 ヒット)

アミタヴ ゴーシュ 著 ★★ DHC アーサー・C・クラーク賞受賞

SFなのだがよくわからん内容。というよりも本筋が読めない。単にマラリア原虫発見にまつわる謎解きとそれをモチーフにしたSFを描いてくれていたのなら話はわかりやすかった。実際その部分が相当面白く、それだけでも十分読み応えのある作品に仕上がっていたであろうに、作者はあえてそれを選ばなかった。この作品がアーサー・C・クラーク賞を獲ったとういうのも頷ける。アーサー・C・クラークがキューブリックと共に製作した映画「2001年宇宙の旅」を見て、なんだかよく分からんとの印象を持ったのは自分だけではないと思うのだが、それと同じ匂いがこの小説にはある。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:24:38 (417 ヒット)

ジェフリー・ディーヴァー 著 ★★ 文藝春秋

車椅子の捜査官 リンカーン・ライム シリーズ第四弾。
このシリーズ初めて手に取った私には、ここではさらりと描かれている常連の登場人物の過去のいきさつがわからず、惑う場面があった。シリーズものの宿命なのかもしれない。ぜひ『ボーン・コレクター』から読み直してみたい。しかし、ハラハラするようなストーリー展開、悪玉蛇頭を追っていくライムとサックスの解析、心理描写は秀逸である。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:24:09 (389 ヒット)

石田衣良 著 ★★★ 文藝春秋

この本を読めば時代の最先端を行く秋葉原のことが手に取るようにわかる。話のタッチと登場メンバーの仕立てはなんとなく村上龍作品を彷彿させる。今、秋葉原で何が起こっているのか、オタク、コスプレ、ITの最先端、現物を見れない私にとっては見てきたようなリアルさをもって脳裏に焼き付けられた。オタクが巨大悪に立ち向かう痛快小説である。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:23:38 (349 ヒット)

石田衣良 著 ★ 集英社

ひみつ倶楽部に雇われた大学生が女性に買われる。青春の一ページがこんなだったらと、世の男性なら誰もが一度は思ったことのある誠に羨ましいお話。作者はこんな小説も、もしかしたら別のペンネームで書いていたとのか、と想像してしまった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:23:06 (523 ヒット)

フレデリック・フォーサイス 著 ★★★ 角川書店 上・下

主人公は弁護士、その裏家業が復讐代理人。設定としてはよくある話だが、スケール、話の運び、人物の描き方、いずれをとっても群を抜いている。日本の作家にはこうは書けまい。伏線となるエピソードの一つ一つを短編として捉えることも出来る。
ボスニアでNPOとして働いていたアメリカ人が殺戮された。その犯人をアメリカまで連れてきて司法の裁きにかけさせる。これが今回アヴェンジャーに依頼された仕事。現在のアメリカの宿敵となったテロリストを登場させ、CIAも取り込んで一気にスケールがアップする。序盤の落ち着いた出だしといくつかのエピソードからはこういう展開は想像もできなかった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:22:37 (427 ヒット)

フレデリック・フォーサイス 著 ★★★★★ 角川書店

小気味のいいウイットが効いた五つの短篇集。
奇をてらったトリックや重箱の隅をつつくような伏線などないのだが、全ての結末において、うーんと唸らせてくれる意外性。物語の醍醐味を十二分に味あわせてくれる。読み終えた後に再びタイトルに目をやると、これが内容の全てを物語っていたりする。ここでまた一本取られる。タイトルにもなっている「戦士達の挽歌」の原題は『DerVeteran』。「ベテラン」という意味をしみじみと感じさせてくれた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:19:34 (428 ヒット)

スティーブン・ヴォイエン 著 ★★ 講談社文庫

ピーター・マシーセンに同名のノンフィクション風の作品があるが、この小説はその影響を強く受けている。前者は雪豹を追いつつ自己との対話を描いているが、こちらは完全なエンターテイメント。雪豹や他の希少動物の調査のためネパールの奥地に向かう主人公ら一行を待ち受ける怪しい影。話の筋としては変化に乏しいのだが、トレッキングの雰囲気は十分味わえる。話が進まず、つまらなく感じることもあるが、そこは堪えて読み進む。山の本としての評価は分かれると思うが、読み終えた後は小高いピークに登ったような印象が残った。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:19:05 (384 ヒット)

ダン・ブラウン 著 ★★★ 角川書店 

はじめに読んだ『デセプション・ポイント』よりは面白い。
ジェットコースター・サスペンス、しかもタイムリミット付。たった一滴ですさまじい破壊力のある反物質が盗まれる場面から始まり、話はコンクラーベが行われようとしているバチカンを舞台に展開する。信仰と最先端科学の接点、すなわち、『量子力学を突き詰めていくと心の問題に係わってくる』と言われているが、ここでもそれが一つの主題となっている。が、真骨頂は主人公の謎解きの聡明さと、それを追ってヒロインと共に繰り広げる大活劇。文字の裏側に映画のスクリーンが透けて見えるくらい。
24時間で事件は解決するのだが、本当に一日あれば読めてしまう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:18:40 (505 ヒット)

浅永マキ 著 ★★ 学習研究社

伝奇小説。
犬が神がかりの象徴と描かれているものとしては、西村寿行の作品がまず思いあたる。やや官能的な内容が伴うのもこの手の小説の楽しみでもある。だが、本作品は並みの官能小説しのぐ内容で、いささか戸惑いを抱きながら読んだ。作者はまだうら若き女性らしいのだが、どこにそんな想像力が潜んでいるのであろうか。まさに血みどろの結末は圧巻であった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:18:16 (526 ヒット)

沢木耕太郎 著 ★★★★★ 新潮社

久々に出た読み応えのある山のノンフィクション。
山野井夫妻のギャジュンカンでの登攀の模様を詳細に描いている。
山岳史に刻まれるであろう壮絶なこの山行のあらましは雑誌で見ていたが、生きて帰って来られたことが奇跡に近い内容だったと記憶していた。そこでは山野井は、わずか数ページ分しかその模様を語らなかった。その信じがたい山行についてもっと知りたいと思っていたのは私だけではあるまい。あまりにもすごすぎる生還劇の一部始終がここに描かれている。
文章に切れがあるわけではないのだが、二人の壮絶な戦いの描写と生きて帰ってきたという事実、がそれを補うにありあまっている。写真、地図が添えてあればなお良かったと思う。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:17:52 (426 ヒット)

キム・スンホ 著 ★ 小学館

上下2冊それもかなり分厚い本なのだが、中身は漫画、マンガチック。
プレートの移動によって日本列島が引きずり込まれ、日本が沈没してしまうことがわかった。ここまでは小松左京の『日本沈没』を彷彿させる。しかし、『日本沈没』はそのときの悲惨な様、混乱を描いたのに対して、ここでは別の切り口となっている。日本が消滅すると判明した時点で日本がとった行動は、オーストラリアに新天地を求め、しかも武力で、戦争を仕掛けて占領しようというもの。これだけでも笑ってしまう。加えて、軍事技術的な描写は私が小学生のとき読んでいたマンガ雑誌の域を出ていない。というか、そのもの。会話はマンガの吹き出しのようで、ただそこに絵がないだけという感じ。
原著は『GAIA』という題名で、主題は違うところにあるのだが、なんというか、読むマンガという印象。韓国語の邦訳の仕方にも原因があったのかもしれない。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:17:17 (412 ヒット)

ダン・ブラウン 著  ★★★ 角川書店

ダン・ブラウンはベストセラーとなった『ダ・ヴィンチ・コード』の作者とのことだが、自分はそれとは知らずに手にとった。
アメリカ大統領選候補者をめぐって表裏の駆け引き。それに絡め合わせたNASAが舞台の謎解きというのが意外というか新鮮に感じた。NASAのロケットやスペースシャトルには広告が入ってなかたんだな。筆の勢いは全文を通してスピード感に溢れ、読んでいて心地よい。誰が善で、どちらがうそを言っているのか、くるくる変わるシーン毎に展開が読めなくなる。ハイテク要素もてんこ盛りで、007的なのりを感じた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:16:38 (344 ヒット)

村上龍 著 ★★ 集英社

歌の本ではない。やたらと口語調の文章。ブックカバーが内容を象徴している。昭和はすでにレトロとなってしまったが、その時々の流行り歌が作品中で使われ、その頃の自分を思い出してしまう。登場人物らは過去にはなんの繋がりもないのだが、何気ない会話のなかで昭和の一場面が語られると、それが共通認識となっていたりする。昭和の時代はモノカルチャーの押し付けの真っ只中だったとつくづく思う。平成になってもその歩調は止まらないが、それを感じるのは時間を経てからのことであろう。昭和を懐かしむのは年をとったからに違いない。
淡々と殺しが描かれているが、なんとなく哀しい。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:16:09 (351 ヒット)

中村保 著 ★★ 山と渓谷社

チベットの東には6千から7千メートル級の未踏の山がごろごろしているらしい。といってもどの辺なんだかピントこない。筆者はその山域に何度も足を運びいれ、未知の山々を調査して歩いた。本書はその紀行と記録の集大成である。この地域は中国にとって非常に難しい領域であるため、入域、登山ともに非常に厳しい制限がる。その悪条件をかいくぐって踏査している。『入ってしまえば、こっちのもの』なのか。
山域的なこともあって、漢字の地名、山名、人名が非常に多く、読むのに苦労する。カタカナばかりでもつらいものがあるが、漢字ばかりでもやはり読みづらい。しかし、雪をまとった目を奪われんばかりの秀峰の写真も載っており、あれやこれやと想像力をかきたてれた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:15:43 (421 ヒット)

アレックス・ロビラ 、フェルナンド・トリアス・デ・ペス 著 ★★ ポプラ社

一昔前世界的にベストセラーとなった、おとなの童話。
幸福を呼び込むというクローバーを求めて旅立つ二人のナイト。その物語には幸運を掴み取るための大事な何かが語られている。その物語を映し出したように、公園でたたずむ二人の老人。一人は成功者、そして一人は未だ幸運に出会ってない者。

一時間足らずで気軽に読める。だらだらと流れていく日常生活に、ちょとした憩いをもたらしてくれる、そんな本だ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:15:14 (378 ヒット)

村上龍 著 ★★★ 幻冬舎 
第59回毎日出版文化賞(毎日新聞社主催) 野間文芸賞受賞

けっこういけるかな。だんだん村上龍にはまってきた。
北朝鮮の反乱軍が福岡を占領し、九州が封鎖される。危機に瀕したときのシュミレーション、庶民の行動、生活、自衛隊の動き、政府の対応、が細部にわたって描かれている。しかし、それだけでは終わらないのが村上龍流。『壊し』と『おかし』が加わって彼独自の世界を形成している。
圧巻は、やはり、終盤の攻防戦なのだが、線香花火のような結末には、『あれっ』という感じ。これも彼なりの美学なのかな。

在日朝鮮人の方からは、批判の声も上がっているらしい。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:14:40 (370 ヒット)

麻生幾 著 ★★ 産経新聞社

この人の作品はかなり期待して手にとる人が多いと思う。分厚い上・下に分かれた長編で、さぞやと楽しみにしていたのは私だけではあるまい。
この手のテロを舞台とした、諜報員の活躍はどうしてもトム・クランシーの作品とだぶってしまい、だぶられたら勝てるわけがない。手法が似ているのだが、人物の描き方にはトム・クランシーに一日の長がある。
古参のテロ『連合赤軍』と現代的なウイルステロのモチーフを取り上げたのまでは良かったのだが、ヒロイン、ヒーローの人物描写はもう少しという感があるものの、他の登場人物にいたっては及第点には届かず、事象の必然性もやや納得しがたい箇所が多々見受けられた。
もう少し完成度の高い内容と期待して読んだ分だけ、満足度は今一だった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:13:59 (398 ヒット)

石田衣良 著 ★★★ 文藝春秋

『波のうえ』とは何のことかと手にとってみれば、株の相場のことだった。なるほど。だが、作品としては波は無く、最初から最後まで小気味のいいテンポで書かれている。取り立てて仕掛けも無いが、予定調和もない。
大学を出たものの職にありつけず、パチンコで日々の生活をしのいでいた主人公に、ある日突然ジジイから声が掛かる。自分のもとで仕事をやってみないかと。そのジジイが株の達人だった。仕事とは、とある銀行の株価を毎日ノートに書き付けることと、新聞をすみからすみまで読むこと。株価の羅列から、青年は株の波を感じ始める。株価と世の中の動き、経済のダイナミズムをジジイは青年に教え込んでいく。青年はそれに応え、最初の取引で勝利を掴む。
登場人物の設定と全体に漂う哀愁感、なんとなく浅田次郎を彷彿させる。
株というものは、購入した値段よりも高く売って利益を得るものだと思っていたが、下がっても儲かる仕組みがあることを初めて知った。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:13:21 (329 ヒット)

村上龍 著 ★★★ 幻冬舎

ネットで見ると、この本には非難の声が多数上がっている。『ろくな職業経験もない著者が、職種に偏見性を持って書いた』というのがその大方の意見。だが、自分的にはそうは思わない。
実際そうなのかもしれないが、それを非難するにはあたらない。作家の職業についての取材ノートをデータベース化したもんかなというのが第一印象。
夕食時など、ちょっと、さらっと、開いても気軽に読める。ふと思いついた、この仕事、あの仕事はどんなんかなと感じたとき、参考にすることも出来る。
一家に一冊、親も子も楽しめる。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:12:41 (355 ヒット)

宮尾登美子 著 ★★ 宮尾登美子全集 第五巻  朝日新聞社

昭和37年、処女作にして婦人公論女流新人賞を受賞。この年直木賞の候補作にも昇っていたが、もれた。昭和51年では『陽暉楼』で再び候補に上がるが、これも、残念がながら選にもれてしまう。ようやく直木賞をとったのは昭和53年の『一弦の琴』である。実にまる17年もかかっている。しかし昭和48年には『櫂』で太宰治賞を受賞しており、ことのきすでに宮尾登美子の『文』は確立されていた。
舞台は大阪、たぐいまれな才能で珠玉の真珠の連を紡ぎ出す女性が主人公。彼女の繊細な感覚から生み出された連は世界中の注目の的となる。真珠の声を聞き、真珠の気持ちになって、表面の輝きだけでなく、内面からにじみ出る微妙な綾までも見通してしまう主人公。
『櫂』からみればかなり荒削りだが、宮尾文学の兆しは見てとれる。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:12:10 (544 ヒット)

宮尾登美子 著 ★★★★★ 宮尾登美子全集 第五巻  朝日新聞社

最初は旧仮名遣いに戸惑ったが、しだいに慣れてくる。
昭和10年、四国山脈を縦断する土讃本線(高知〜高松)が全線繋がった。その祝賀式に花を添える『 陽暉楼』お抱えの芸妓の一人である房子は、身重でありながらもひたすら舞の稽古に打ち込む。しかし、全線開通のその日から、房子の運命が急転する。
『 陽暉楼』は太宰治賞を受賞した『櫂』にも登場する高知きっての大料亭である。『櫂』では、『 陽暉楼』に芸妓を斡旋する店に嫁いだ貴和の半世紀が描かれていた。ここでは『 陽暉楼』の子店の浜むらが舞台で、房子はその看板芸妓である。いつもながら、主人公と係わりのある人、風景、町の風情、四季の移ろい、が細やかに自然体で描かれている。読んでいて非常に落ち着く文章だ。順風満帆に思えた主人公の運命があるときを機転として次第に傾いていく。どうにもならない宿命に身を任せつつ、懸命に歩もうとする房子。これは『櫂』でもそうであったし、『一弦の琴』でも似たような印象がある。
落ち着きたいときは、宮尾登美子かな。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:11:29 (365 ヒット)

小池真理子 著 ★★ 新潮社 
全くの偶然から恋人を銃殺してしまった妹。その拳銃を山に捨てに行った兄の祐介。そこのペンションで祐介に狂気が待ち構えていた。ストーリー、展開、結末とも陳腐。『ナルキッソスの鏡』に出てくる狂気の母親とここに出てくるペンションの主人がだぶってしょうがない。そう感じるのは私だけだろうか。小池ワールドは類似品が多い。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:10:58 (381 ヒット)

小池真理子 著 ★★★ 新潮社
天才画家、辻堂環の訃報から始まる短編の集合体。天才の内面は黒く渦巻く嵐のようなものなのだろうか、はたまた木漏れ日が差す穏やかな縁側のようなものなのだろうか。どこにでもいそうな6人の主婦が環の死を知った瞬間、彼との蜜月の記憶がよみがえる。
それは一時ではあるが環との狂おしい、まぎれもない恋の蜜月だった。そんな過去があったのかなかったのか、それを全く感じさせない彼女らの平凡な今の生活とのギャップに引っかかるものがある。そんなんでいいの?


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:10:27 (483 ヒット)

小池真理子 著 ★★ 集英社

ホラー・サスペンス。
逢魔ヶ森別荘地に若い男女が消えていく。主人公の真琴もやがてそれと同じ末路を辿ることになるのだが、彼には又別の物語が展開する。女装倒錯に浸る真琴と逢魔ヶ森で助けた乃里子がおりなすあやしい世界。小池真理子の得意な分野だ。
山に住む親子の狂気がありきたりなのが残念。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:09:41 (518 ヒット)

ルース・ベネディクト 著 ★★★★ 社会思想社

二十数年ぶりの読み返し。
日本社会の構造を文化人類学の面から分析している。この本を読んだ誰もが驚くのは、筆者が一度も来日していないのにこれだけ鋭く日本と日本人が分析されていることだ。少なくとも昭和三十年代生まれの私の日本感を見事に言い表している。作者が日本研究を米国から依頼されたのは昭和19年6月、米国が太平洋戦争において大攻勢をかけ始めてきた時期である。米国はありとあらゆる面において敵国日本を知る必要があり、その一環として筆者に日本研究が依属された。
この本の妙は、筆者の分析力の鋭さにあるが、それよりも私は英語で書かれた日本についての記述を邦訳で読み直すという点にあると思う。原書で読めば、もちろん理解できるはずもないが、ちんぷんかんぷんに違いない。この日本人から見て鋭いと指摘された分析は、どの程度米国人に理解されているのだろうか、それも気になる点である。


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