投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-27 9:41:47 (174 ヒット)

冒頭のつかみには何かを感じさせるものがあったが、中盤以降設定に無理があるというか、安易に流れていった感があり、ちょっと残念。もの哀しさが残ったのがせめての救い。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-17 15:37:52 (118 ヒット)

前に読んだ「六人目の少女」も複雑だったが、この作品も頭がこんがらかるくらい手の込んだ物語展開だった。
最近読み込んでいる誉田哲也の作品の中に、政府高官の悪行をインターネット上で公開し、その犠牲となった家族のものがそれを閲覧しそれらに制裁を加える、というのがある。一見関連性のない殺人事件が、捜査の過程を経て、全体を俯瞰していくとそれが意図された事件だと判明してくる。本作品の手法はある意味それと似ている。あちこちで起こる殺人事件の関連性はなかなか見えてこない。誉田哲也の作品でインターネットに情報を暴露した影の首謀者の役割を果たしているのが本作品では教誨師という聖職者。罪を犯した者が教会に懺悔に赴くが、その告白内容を含めた個人情報は教会にデータとして蓄積される。その罪を法をもって裁くのではなく、教誨師は親戚縁者にそれを伝え戒めとして復習の機会を与えるというもの。その主題に二重に三重にひねりを加えているのだが、それを過剰演出と採るか面白みが増したと採るか、評価が分かれるところであろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-17 15:35:59 (114 ヒット)

「硝子の太陽 ルージュ」と対をなす作品だが、別々の出版社から出されているというのも面白い。ルージュで不完全燃焼となった穴を埋めてくれはず、と期待して手に取った。中盤ごろからルージュとのリンクが見られる。ルージュとノワール、同時出版なのでどちらから読んでもお楽しみ度合いは一緒のはずだが、ルージュの方を先に読んだからかもしれないが、どちらかといえばルージュが主でノワールがその補完というイメージ。ルージュで回収損ねた布石はかろうじて回収されてはいるが、なんとなく辻褄合わせという印象がぬぐえない。ルージュで描かれたような深い闇を期待したのだが、それとは真逆の筆致に拍子抜けした。まぁ、これも作者の懐の深いところだと言えなくもない。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-17 15:34:54 (150 ヒット)

ロック系バンドガール「夏美」の青春ストーリー、第二弾。
バンド仲間の死を乗り越えて、芸能プロダクションに入ってからも自分の道を突き進む夏美の物語。ハチャメチャぶりは相変わらず、ちょっとやそっとの困難にはめげない夏美。新たな仲間との出会いによって、より大きく羽ばたいていく姿が微笑ましい。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-16 17:49:17 (140 ヒット)

ロック系バンドガール「夏美」の青春ストーリー。
たぶんこれもバンド女子のバイブルとなっているのだろう、軽いタッチで気軽に読める。剣道女子のバイブル「武士道」シリーズ、警察官のバイブル「姫川玲子」シリーズ、と並ぶ。総じて女子青春物語を描くのがとてもうまいが、そこに作者が得意とする「バンド活動」をからませている。ただの「バンド系女子物語」に収まらず、ちょっとしたひねりが加えてあるのがよかった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-16 17:48:18 (112 ヒット)

「ジウ 機廚鯑匹鵑任ら、しばらくたったので再度気ら読み直しした。
気任倭杼もつかなかった物語展開には度肝を抜かれた。暴力的な場面はこれでもかこれでもかというほど残虐に描かれ、心情的場面はとつとつと語られる。サスペンスを軸としながら退廃的な「新世界秩序」世界を脇として、残虐的、心情的挿話をうまく組み込ませて第一級のエンターテイメントに仕上げている。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-16 17:47:45 (145 ヒット)

誉田哲也の魅力「青春物語、警察物、姫川玲子、私的制裁、永田町の闇」満載の傑作。特に、青春物語と警察サスペンスとの融合が秀逸。最初の頃に引き込まれた姫川玲子の闇は作品を追うごとに薄れていって、警察組織と永田町そして社会の闇の色合いが濃くなってきた。姫川玲子が物語構成の一部分的な扱いになっているのがちょっと残念。また、布石の回収が完全でなく疑問が残る。なので、★一つ削った。続編があって、その点が回収されないことには、この作品はもう一つ★を落とすことになる。この点、他の読者はどう評価するのだろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-16 17:46:38 (114 ヒット)

相変わらず、残虐シーンと心情的場面との組合せが絶妙。先に読んだ「ノーマンズランド」同様、布石の回収が不完全、と思ったら、同時発刊の「ノワール」と対の作品であったらしい。なので「ノワール」を読んでみないことには下手なことは言えない。また、「ジウ」シリーズとの絡みもあって、読みかけの「ジウ」を最後まで(供↓掘貌匹猊要性を感じた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:18:08 (172 ヒット)

久しぶりにわくわく感マックスに達したミステリー。
シリアルキラーを追うのだが、手掛かりをもとに犯人に近づいたと思ったら、そこにはまた別の犯人の手によるものと思われる殺人事件が絡んできて、それがまた物語全体の入れ子になっていくというややこしいい構造。それでいて作品としての調和を保ち破綻がない。単なる布石の回収という手法に寄らない複雑に仕込まれた物語構成に新鮮味を覚えた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:12:44 (1001 ヒット)

リンカーン・ライムから離れた新機軸の物語。今度は懸賞金稼ぎの探偵コルター・ショウが主人公。ジェフリー・ディーヴァーの作品はいつも社会現象からヒントを得て、それをバックグラウンドとした悪役を設定している。その着目点の掘り下げ方の深さが読み手の好奇心を満たしてくれる。今回は「ゲーム業界」がまな板の上に載せられた。物語の進行具合、展開はリンカーン・ライムとさほど変わらない。軽いどんでん返しの繰り返しの後に来る大きなどんでん返し。新シリーズは楽しみのような気がするが、ストーリー展開に真新しさが感じられないのがちょっと残念だった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:12:11 (134 ヒット)

手放しで微笑ましいと思える物語、そして絵にかいたような女子の青春ストーリー。仕事に躓いて落ち込んでいるとき、怪我や病気で入院しているとき、そんなときに読めば間違いなく前向きな気分にさせてくれるだろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:10:54 (141 ヒット)

誉田哲也の作品はどれもよくできている。そういうレベルからすれば本作品はちょっと満足度が足りない。手を抜いたわけではないと思うのだが、筆致が軽く(というか軽すぎる)、作者の息抜き的な作品という印象を与える。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:10:21 (144 ヒット)

短編集。姫川玲子が活躍した物語は読んだそばから忘れてしまったが、彼女が昇進のための受験勉強のために利用した本屋さんの喫茶室から始まる物語は印象に残っている。女性視点の路線も作者の得意とするところ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:09:48 (113 ヒット)

これも社会悪への私的制裁が主題となっている。誉田哲也はこういう世の無常をあぶり出すのが好きなのか、得意なのか、そんな作風が一つの路線にある。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:09:09 (139 ヒット)

殺人の連鎖、といってもシリアルキラーを描いたものではない。「一寸の虫にも五分の魂」という諺を犯罪に当てはめるとこんな物語になるのかもしれない、「殺人にも一分の理」。社会が生みだした「悪」は誰が清算するのか、私的制裁の話でもある。かといって殺人が許されるわけもなく、むなしさが残るだけ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-13 5:29:37 (157 ヒット)

膝のことは気をもんでばかりもいられないので、自分の在るがままを認めようと思って出かけた。
伊折橋を渡ったところに駐車。取付きの急登は雪が切れている。登り切ったところからアイゼン歩行。上り下りのトレースがたくさんあり人気のほどが伺える。1100からの最後の登りがきつい。膝が半分バカになった感じで登りきる。それにしてもここからの眺めは素晴らしい。

写真をバチバチ撮っていたら、急にメモリー異常となって、シャッターが切れなくなった。一昨日歩いたときも同じ不具合が出た。メモリーの問題なのか、カメラ本体の問題なのかわからないが、メモリーのスペアは必携と感じた。

取付きから山頂まで3時間。3年前(2018/3/31)は写真を撮りながら2時間15分で登っている。昨年10月に脛をぶつけた不具合が尾を引いている感じ。はたして4月に大熊山に登れるのか、悩ましいところ。




















投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-13 5:18:39 (145 ヒット)

気持ちのよいトレッキングを楽しんだ。
一旦、大熊谷から730のピークに上がり剱の眺望を楽しんだ後、いつもの場所まで。
往復7時間。

途中でスノーシューが壊れた。自分の足の方が先にダメになるかと思っていたら、こちらの方が先だった。昨年、ストラップが劣化したので数千円も出して取り替えたばかり。今回は、靴を包み込むプレートが破損。これも経年劣化。この部分は交換できるのだが、前年調達したストラップの互換性が無いため、ストラップも併せて交換しなければならない。ショップでの見積もりは3万数千円。あと1万円出せば新品が買える。とりあえず今回は見送ることにした。
























投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-10 6:09:24 (173 ヒット)

先だって、日本穀物検定協会主催「令和2年産米 食味ランキング」が報じられた。当県一押し「富富富」の評価はAランク。ちなみに「群馬産「コシヒカリ」が特A。特Aは53産地品種もあり、これからもれた「富富富」はいったいどんなお米なのだろう。県はこれをブランド米として東京先行高価格戦略で売り出したのだから、関係者も悩ましいところだろう。(この件については以前述べたのでここでは触れない)。ランクにも幅ありどの辺に位置するのか興味がある。たぶん点数化されていると思うのだが、どうなんだろう、もしそうなら、対象154産地品種の全点数が知りたい。 
一方、米・食味鑑定士協会主催の「米・食味分析鑑定コンクール : 国際大会」(今回で22回目)の結果も気なる。これは、完全に数値化されていて、まず、1次審査、2次審査でふるいにかけられる(栄養価、たんぱく質、でんぷんなど)。そこで基準点に達しないものは食味審査に進めない。個人でも組合でも法人でも参加でき、前回の検体個数が5100以上、優秀検体が137というから、かなり評価は厳しい、大方は予選落ちということになる。それでも、すべての評価点数が明示される。何年か前にその結果を冊子にしたものを見せてもらったことがある。厚さ1センチの本で全検体数網羅。出品者、品種、銘柄、点数が表組されている。はたして今回「富富富」は出馬したのか、何点だったのか、とても気になる


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:27:58 (132 ヒット)

姫川玲子シリーズ。
犯人は中盤で予想がついたが、一つだけ見逃していた点があった。それは、最後になってわかるのだが、たぶん多くの読者は何気なく読み捨てていた場面だろう。
三ツ星でもよいのだが、期待した姫川玲子の「闇」が出て来ないので★一つ減らした。題名の付け方に?マーク。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:27:10 (123 ヒット)

姫川玲子シリーズ。
後半になってから、姫川玲子の「闇」が読み手の心をくすぐる。
映画になった「ストロベリーナイト」は原作となった「ストロベリーナイト」よりもこちらの作品の方がイメージ的により深くかぶる。
複数の物語が綾をなしている。副題となっている警察の組織防衛はそれなりの出来だが、主題を構成している物語の展開は全く読めなかった。それらに姫川玲子の「闇」がうまく重なってきておもしろさ拍車をかけている。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:25:06 (154 ヒット)

誉田哲也は心の闇を炙り出すことに主眼を置いた警察物も読ませるが、この作品のような青春群像を描くのがとてもうまい。作者としてはどちらが本当に描きたい分野なのか、今の時点ではわからない。
バンドや楽器をやっている、そういう業界の人が読めばより深くこの作品に入っていけるのだろうが、そうでなくてもとても面白く読ませてくれる。
ハッピーエンドで終わるちょい手前あたりの泣かせる場面が印象に残った。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:24:34 (142 ヒット)

姫川玲子シリーズ。
警察物の短編集は初めて手にした。どちらかといえば長編が好みな自分だが、この手のものに縁が無かったのは単に食わず嫌いだったためだろう。それぞれのヤマはうまく解決していくのだが、読み応えという点から捉えるなら、読後の満腹感にいま一つ欠ける。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:06:46 (156 ヒット)

久しぶりの星七つ。作品ごとに題名が異なるが、続き物なのでまとめて感想を書くことにした。4作品とも、紅白二本のしおり紐がついている。剣道の試合のとき、背中に付ける「タスキ」を模したもの。私もよく覚えている、試合の前に仲間や後輩や誰かが背中の胴紐にタスキを結んでくれる、あの感触。剣道において紅白のタスキは特別な意味を持つ。

「武士道 シックスティーン」が書かれたのが2005年、そして最後の「ジェネレーション」が出たのが2015年。この間、少女たちの成長に沿って「セブンティーン」「エイティーン」が出版されている。

これは漫画だ、絵のない漫画。剣道女子の中学から高校、大学そして卒業した後までを描く青春物語。何も考えなくてよい、ただただ彼女たちの心の内を辿るだけでいい。池井戸潤の「半沢直樹」が銀行マンのバイブルとなったように、おそらくこの作品は女子男子を問わず剣道少年のバイブルとなっているのではないかと推察する。そう思うのはもう老人の域に入った自分だけなのだろうか。現役剣道女子の声を聴いてみたい。

それぞれの巻末の文章が各々の物語を象徴しているので添付しておこう。

「武士道 シックスティーン」
大きな拍手を浴びながら、お互いに構え、剣先を向けあう。
この場所で再びめぐり合い、この相手と戦う、喜び。
最高の舞台で迎えた、最高の相手。
この時代を共に生きる、二人といない、好敵手。
さあ、始めよう。
わしたちの戦いを、わたしたちの時代を。
これが新しい、武士道の時代(研究中)の、幕開けになるー。

「武士道 セブンティーン」
わたしたちは、それぞれ別の道を歩み始めた。
でもそれは、同じ大きな道の、右端と左端なのだと思う。
その道の名は、武士道。
わたしたちが選んだ道。
わたしたちが進むべき道。
果てしなく続く、真っ直ぐな道。
そしてまたいつか、共に進むべき道―。

「武士道 エイティーン」
わたしたちは、もう迷わない。
この道をゆくと、決めたのだから。
急な下り坂も、下り坂もあるだろう。
枝分かれも、曲がり角もあるだろう。
でも、そんなときは思い出そう。
あの人も、きっと同じように、険しい道を歩み続けているのだろうと。
そう。すべての道は、この武士道に通じているー。

「武士道 ジェネレーション」
同じこの道を、わたしたちは歩んできた。
かけがえのない出会いがあった。
心震えるような学びが、骨身を削るような試練があった。
しかし今、来た道を振り返ることはしない。
命ある限り、わしたちは進まねばならない。
この武士道を、続く者たちに、伝えなければならないー。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-2-23 17:58:46 (122 ヒット)

このところ、「ノワール」から遠ざかり、すっかり変化してしまった馳星周。
この作品もその一冊。一匹の犬が、東北から九州へと飼い主を替えながら辿る数奇な運命。そして、最後の最後まで予想もつかない物語と結末。先の見えない展開にぐいぐい引き込まれていった。

「ノワール」の頃は、これでもかこれでもかという書き込みと筆圧に圧倒された感があるが、本作品ではそれとは真逆の筆遣いがみられる。つまり、できるだけそぎ落としたスリムな文体と文章。比べるのもなんなのだが、ちょっと前に読んだ冲方丁の「アクティベイター」の対極に位置する作風だ。「語らずして語る」とでもいうのだろうか、それは絵でいうところの「描かずして描く」、木彫でいえば「彫らずに彫る」という境地。
直木賞を獲ったのも頷ける。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-2-22 10:42:12 (128 ヒット)

刑事ものは物語に厚みを持たせるため警察組織の描写が避けられない面がある。この作品もその例外ではない。そうなると登場人物が多くなりがちで、はて?どんな部署だったっけ、とか、上下関係はどうなっていたか、など自分の中で構築するのに時間がかかる。終盤ではそんなことはどうでもよくなっていくのだが、序盤から中盤にかけて、読み進むのに苦労する。

誉田哲也はその避けて通れないところを描くのがとてもうまい。物語の外枠を捉えつつ、人物描写もそれに合わせて卒なく描かれているので、読み進むうちに自然と物語に入り込むことが出来る。そういう場面ではどちらかというと「柔」な印象があるのだが、一たび人が死ぬ場面となると、いきなり「強」「剛」を通り越して「超ド級」「恐」の筆致に変化する。この明暗、強弱の付け方の妙が作者の真骨頂なのだと思う。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-2-21 5:42:11 (201 ヒット)

冲方丁の本ならば間違いなくおもしろいだろう、と思って手に取った。
だが、そう思わせてくれたのは冒頭だけ、読み進めるうちに、ん?と疑問符が付く展開となっていった。
登場人物のキャラクター設定が甘いというか雑。時系列にいって過去のことが既知のごとくさらりと語られる場面が多々ある。読者に想像力を働かせよということなのか、あるいは、次作への含みなのだろうか、それにしても唐突に出てくるので、読者は戸惑ってしまう。トドのつまりが、物語の納め方もおざなり。大風呂敷を広げ過ぎて収拾がつかなくなって、無理やり押し込んだって感じ。総じて、これまでの作品にみられたような緻密さが全く見受けられず、ただただ行間を埋めただけのつまらない作品となってしまった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-2-4 10:49:09 (135 ヒット)

wowowの映画でやっているのを観て、原作を読んでみたいと思って手に取った。
いわゆる警察刑事もの。刑事もので思い起こすのは高村薫やジェフリーディーヴァーか。だが、ここに描かれているのはそれらの作品とはちょっと趣が異なる。簡単に言えば犯罪小説と刑事小説ということだろうか。
犯罪小説に付き物の暗い闇も出てくるには出てくるが、軽いマンガのような「お笑い」が随所に出てきて、これが作者の作風と言えるのかもしれない。登場人物のキャラクターは端的に描かれているし、ストーリーの破綻もない。テレビの刑事ドラマを観ているかのような読み心地だった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-2-4 10:48:24 (130 ヒット)

原題が「Camino Island」、これが『「グレート・ギャツビー」を追え』なのだから、笑わせる。しかも、邦訳は村上春樹ときている。うけを狙った販売戦略に踊らされるのは庶民のはかない性。もっとも、ジョン・グリシャムの新作というだけでも私は手に取るのだが。
ジョン・グリシャムお得意の法廷ものにあるような切れのある物語ではなく、Camino Islandというリゾート地で繰り広げられるソフトサスペンスといった印象。アメリカの稀覯本蒐集にまつわる私の知らない世界が描かれていて興味深い。推理の手法よりも、登場人物のキャラクターの多彩さが売りの気楽に読める娯楽作品だと思う。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-2-4 10:47:39 (159 ヒット)

分厚い5巻。当初思っていたより読了まで時間がかかった。
私の「三国志」は吉川英治のそれで世界観はほぼ固まっていた。先だって、北方謙三のを手にしたとき、また別の三国志に出会った感があった。吉川英治のは劉備中心の構成で、故事もうまく活用されていて、多分多くの人はこの作品に感化され私と似たようなイメージを抱いていたのではないかと思う。それに対して、北方謙三作品は吉川英治「三国志」とは一線を画し、周瑜にかなりの重きを置いている。劉備は惨敗続きの弱小軍団に過ぎない。酒見賢一の本作品もどちらかと言えば、北方謙三に近いスタンスをとっている。劉備の終盤も淡々と描かれている。本作品の凄いのは、史実とその後に作られた三国志演義、そして「三国志」を深堀して、独自の三国志を再現している点にある。これまで多くの人がイメージとして抱いていたであろう「三国志」とは全く違った世界がそこにある。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-1-9 16:05:30 (180 ヒット)

私が「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」を読んでいたころ、カミさんが本書を図書館から借りてきていた。著者のことは初めて聞く名で、ましてや日本人初の女性K2サミッター(2006年)であったことも知らなかった。そもそも日本人女性でK2に登った人がいることさえ知らなかった(実は3人いる)。そんな著者の本だけに興味津々、カミさんが読み終えたので、返却期限まで間があるので、拝借して読んでみることにした。

期待していたK2や山のことについての記述は冒頭の部分だけ。K2登頂後に挑んだシスパーレでの敗退を期に、彼女の興味は山岳僻地に暮らす人々に向いていく。その後。独りアジアの砂漠や草原を旅する中でシリアの人々に魅了されていく。本書の主題はそんな彼女が見た、経験した、シリア内戦とそこに暮らす人々の生活。砂漠に暮らす人々の生活様式やイスラム社会のことも新鮮だが、それがリアルに映るのは彼女の実体験からくるものだろう。そこにはK2登頂よりも過酷で非情な現実があるのだが、そのすさまじさをあっさりとした文体で綴られているのも本書の特色だ。そこには、そこに踏み込んだ彼女の純粋でしなやか、かつ芯の強さがうかがえる。

たぶん、彼女が本書で意図したことは、本当のシリアを、本書の題名ともなっている「人間の土地」を、より多くの人に知ってもうらうことだと思う。その意味では、見事にその役目を果たしている。だが、読み手が向き合うのは、メディアなどから伺い知れないシリアの実情もさることながら、そんな「シリア」に入れ込んだ彼女の生きざまそのものだと思う。もし彼女がK2登頂を果たしていなかったら、こんな風に「シリア」とは向き合えなかったような気がする。根底には「山」というものが根っこにあるからこそのその後の彼女人生があると思う。本当に筆舌に尽くしがたい彼女の生きざま、それを選択した彼女に尊敬の念を覚えるとともに彼女とその家族に幸あれと思う。


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