「アンダー・ワールド USA」 ジェイムズ・エルロイ 著 ★★★ 文藝春秋

投稿日時 2017-3-10 6:16:40 | トピック: 本棚

アンダー・ワールド三部作の締めくくり。
前二作よりも推理性が色濃く出ている。だが、その真相を解くのは容易ではない。前二作からのキューバとベトナムそしてケネディとマフィアとFBIの物語の資産を引き継いでおり、この作品単独で味わうのは非常に難しいだろう。そうでなくとも、文間を読み解くのに苦心する作者の世界。作者はそこに推理性を加えて、一味付けたかったのだと思う。

前二作とは起源を別にした「エメラルド伝説」をモチーフとした物語と、それまでの物語が交錯しながら進んでいく。うまい具合に仕組まれているというか、そのどっちの物語のことを描いているのか、ごっちゃになって、とりとめもなくただただ物語が進んでいくように感じる。いったいどこで落とし前をつけるのか、どういう結末が待っているのか、それが全く読めない。前二作のものすごいエネルギーをもった物語と伍していくには、そこに新たに加わる物語はそれ相当の品質が担保されなければならない。たしかに新たに加わった物語は奥が深く、本流とうまく綾なして描かれている。しかし、それが「すとん」と収まったかと言われれば、素直にうなずけないものがある。

中途半端な破壊力はつまらない。



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