「ルール」 堂場瞬一 著 ★★ 実業之日本社

投稿日時 2017-6-3 15:34:29 | トピック: 本棚

堂場瞬一、初めての作品。
この作品で「スポーツ小説」なる分野があることを知った。

「山」には読み物がつきもので、紀行文はもとより山を題材とした小説は多くある。山について書くことは、ふり返って登る行為を自分の中で昇華させ、その山を完結させることにある。山の紀行文を読むことは、行かずしてその山に登らせてくれる。山の小説はピンキリだが、山と人をうまく描いた作品に出会えたときは至高の喜びだ。

他のスポーツではどうだろうか、山をスポーツと捉えるにはいささか問題があろうが・・・。柔道、剣道、野球、サッカー、卓球、テニス、バスケを描いた有名なマンガはいくつかあるが、それらが束になっても、「山の本」には及ばない。それほど「山」の懐は深いのだと思う。

さて、本作品。中盤になるまで話の筋が読めてこない。うすぼんやりとベールがかぶせてあるようで、まどろっこしさに戸惑う。中盤以降一気に話が進む中、テーマとなっている「ドーピング問題」に考えさせられる。「ドーピング行為」そのものと、自分と身近な者がドーピングをやっていたとしたら自分はそれに対してどう対処できるか。

また題名ともなっている「ルール」に関しても、文中にさりげなく書かれている「ドーピングが不公平というのなら、本当の公平さを求めるなら、参加選手がすべて同じ条件の下、同じ環境下で練習しなければならい」というような内容のこと、は自分でも思うところはある。オリンピック競技場と同じ施設や器具を使って練習するのとそうでないのとでは結果に差があるのは当然だろう。それが出来るのはお金に余裕ある国に限られる。それは私に言わせれば、ドーピングと同じで反則ではないかと常々思っている。

本作品はいわば小説の下書きみたいな仕上がりで、もっと深く掘り下げた内容であればもっとよかったのではないかと思う。



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