「冬の光」 篠田節子 著 ★★★ 文藝春秋

投稿日時 2017-11-8 12:09:08 | トピック: 本棚

読み始めは、なんか変な本を掴まされたかな、との印象が強かった。それほど陳腐で定型的な出だし。たかが夫の不倫でこうもどたばたするものだろうか。結末から始まる作品にしては、本題を読み進めようという意欲が湧いてこない。もうちょっとひねりを加えた書き出しがあったのではないかと思う。

だが、中盤以降物語は着実に昇華していって、最後までひっぱっていく。しかし、いくら四国巡礼の後自殺したとされる主人公の形跡を追ったとしても、それは最後の一場面でしか過ぎず、作品中おおきなウエイトを占める主人公の側から語られる、家族の知らない、不倫相手と共に積み上げてきた人生に迫ることはできないだろう。父親の追跡劇と父親の裏の人生劇との融合性に難がある。そこのところもちょっとひっかかる作品であった。



はんごんたんにて更に多くのニュース記事をよむことができます
http://hangontan.sakura.ne.jp/xoops

このニュース記事が掲載されているURL:
http://hangontan.sakura.ne.jp/xoops/article.php?storyid=1082