「大統領失踪 上・下」 ビル・クリントン 著 ★★ 早川書房

投稿日時 2019-2-10 15:16:56 | トピック: 本棚

元大統領が贈る小説とはどんなものであろうか、興味はひたすらその点に尽きる。政治家と小説家と二足のわらじで成功している作家と言えばジェフリー・アーチャーがまず浮かぶ。はたして、ビル・クリントンの実力のほどはいかに・・・。よくできた作品だと思う。が、「ビル・クリントンが書いた」という話題性に見合う作品かと問われれば疑問符だらけ。

まず、上・下2巻に分かれているが、この内容ならば1巻で収まるボリューム。なんで2巻しなければならなかったのか理解不能。テロに挑む大統領にしてはスター性に欠ける。ジャック・ライアンンの印象が強すぎるからだろうか。いざ、戦いとなったら、敵が弱すぎる、あっさりとやられてしまう、芸がない。なにより、肝心となる謎解きのキーワードの作り込みが不可解。一見筋が通っているようだが、自分的にはあれっ?と思いながらも物語が進行していくので、もやもやが最後まで付きまとう。さらっと散りばめられた付箋に気付かなかっただけなのだろうかと、何度も何度も振り返ってみたが、結果は同じ、やっぱり読み切れなかった。論理的な破綻はどうしようもない。大統領の身近に女性が多すぎる。副大統領、CIA長官、FBI長官代行、大統領秘書、大統領の主治医、イスラエル首相などなど。これはビル・クリントンの御愛嬌だろうか。

最後に、大統領の亡くなった夫人の名前が「レイチェル・カーソン」。冒頭に出てくるこの名前からあのレイチェル・カーソンを思い浮かべた者は少なくないはずだ。「沈黙の春」は急速に進化する文明に警鐘を鳴らした名著。ネット社会にはらむ脆弱性と危険性が本作品のテーマとなっており、本作品はレイチェル・カーソンへのオマージュ的な意味合いもあるのかもしれない。




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