「義貞の旗」安部龍太郎 著 ★★★ 集英社

投稿日時 2019-9-29 17:31:37 | トピック: 本棚

新田義貞、名前は知っていてもどんな人物なのか全く知らなかった。歴史線上のどこに当てはまる人物なのか、この作品でようやく知ることが出来た。最近になってこの時代を描いた小説を何冊か読んだが、この時代は天秤のように上げ下げする朝廷と幕府の力関係、そしてそれに翻弄される庶民と地方の武士たち、それらがぐちゃぐちゃに入り乱れていた時代だったということが自分の中での認識として定着しつつある。何がなんだかさっぱりわからない、何でもありの時代だったとの印象が強い。なので、この時代を描く小説も焦点を絞り切るのが非常に難しいのではと想像する。個々の人物を描くにはその背景や同時代に居た人物との関係も描かざるを得なく、これだけ混沌とした時代を描くには、それぞれの人物像を一つひとつきっちりと組み上げながら、それらを積み上げていくしかないように思える。単独作家が独りの目線でみた山岡壮八の「家康」のような超長編にならざるを得ないと考える。今のところそんな作品にはめぐり合っていないので、個々の人物を描いた小説をもっともっと読み込んで、この時代を自分のものにするしかないだろう。


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