「書楼弔堂 破暁」京極夏彦 著 ★★★ 集英社

投稿日時 2019-11-16 10:49:47 | トピック: 本棚

憑き物落とし「京極堂」に代わって、本を供養する「弔堂」が心の窓を開けてくれる。『世の中に無駄な本など一つもない、無駄にする人間がいるだけだ』なるほど、うまいことを言う。人、一人ひとりに見合った一冊の本があるのだという。その一冊を「弔堂」が探してくれる。その本は出合ったその人によって価値が見いだされる。弔堂に言わせれば、本が成仏する、ということになる。しかし、それは逆で、悩み彷徨える人間がその本によって一筋の光を見出す、あるいは選択の道標と為す、そういうことではあるまいか。
短編の集合体の形をとっているが、それぞれに登場する人物が後の物語へと引き継がれて行き、伏線となっていく。それがこの作品に厚みを与えている。京極堂のような破壊的な理屈回しではなく、じわっとくる説教が持ち味なので、通快感は薄い。作者も年月を経て、作品にも人間性に於いても丸みが出てきたのかもしれない。



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