「三体 供々暗森林 上・下」劉慈欣 著 ★★★★ 早川書房

投稿日時 2020-7-14 17:33:25 | トピック: 本棚

第一部とは違って、スローなスタート。
ネット上の書評では前作を上回る高評価が多いが、自分的には前作の衝撃があまりにも大きかったので、★一つ落とす結果となった。

この作品で鍵となる「面壁者」が出てきてからも大きな展開はない。4人の「面壁者」の役目は敵からその真意を読み取られることなく敵に備えること。当たり前といえば当たり前のことなのだが、その時がくるまで誰の計画が功を奏するのか、あるいはすべて敵に知られてしまうのか、はたまた他の要素が加わってなるようになっていくのか、そんなことを思いめぐらせながら、読み進めていく。

そこで、頭に浮かんだのが「待てよ、これはハリ・セルダン予測に似ていないか」ということ。すなわち、人類が危機的状態に陥ったときその被害を最小に食い止める必然的な現象が生じる。その危機に際しての最善策が心理歴史学によって予測でき、しかもその確率はかなり高い。しかし、人類はその瞬間が来るまで、それがハリ・セルダン予測とは誰も気づかず、当事者もその行動の結果、どのような結末が来るのか分かっていない。すなわち、ハリ・セルダン予測はそれが終ってみて初めてそれと特定できる。・・・というもの。「なるようにしかならない」という場当たり的とも言えなくもないが、それを確率で予測してしまうというのがハリ・セルダンの心理歴史学。

そう思いながら読んでいると、突然、文章中にハリ・セルダンが出てきて、目がテンになった。なんてこった。作者はあきらかにアシモフへのオマージュを込めてこの作品に臨んでいたのだ。自分の思いと作者の思いが同調し、共鳴した瞬間。これこそ、本読みの醍醐味。

さて、長い長い物語のわりには、あっけない結末。しかし、これもハリ・セルダン予測といえば、それも納得かな。

巻末の解説の中で「4人の面壁者のうちの誰がハリ・セルダンとなるのか」というような記述があるが、これは間違いではないかと思う。問題はハリ・セルダンは誰かということではなく、誰のどういう行動がハリ・セルダン予測となっていくのか、という点だと思う。



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