「出訴期限」 スコット・トゥロー 著 ★★★ 文藝春秋

投稿日時 2014-12-21 19:13:51 | トピック: 本棚

原題が「Limitations」、出訴期限法、日本でいえば公訴時効にあたる。

15歳の少女が同年代の学生らから集団レイプされた。しかもその模様は犯行者の手によってビデオ撮りされていた。しかし、それが提訴されたのが出訴期限の3年を過ぎた4年目。第一審では厳しい実刑判決が下されたが、出訴期限法をもとに上訴された。

犯行自体は卑劣で情状酌量の余地がないものだが、3年の時効切れをもって原判決を覆すことができるのか。そこが本作品の核となっている。主人公の上訴裁判所裁判官は原判決に一定の理解を示しながらも、本件に際しての「出訴期限法」の解釈について吟味する。はたして上訴審判決はどうなるのか。厳密にいえば3年の時効は過ぎているのは間違いない。しかも、未成年の場合の時効は1年と定められている。それすらも大幅に超えている事案。

物語を読み進みながら被告側原告側になって考えをめぐらす。法律の解釈の仕方と真実と正義との天秤が右に左に揺れながら次第に一つの方向に向かって収斂していく。あっと驚くような仕掛けやドラマがあるわけではないが、自分だったらどう考えるか、どの道を選ぶか、そんな楽しみを十二分に与えてくれる作品である。



はんごんたんにて更に多くのニュース記事をよむことができます
http://hangontan.sakura.ne.jp/xoops

このニュース記事が掲載されているURL:
http://hangontan.sakura.ne.jp/xoops/article.php?storyid=834