「図書館の魔女・烏の伝言」 高田大介 著 ★★★★★ 講談社

投稿日時 2015-5-16 20:35:25 | トピック: 本棚

前作で頭にガツンと大衝撃を与えた「図書館の魔女」。はたして二作目はいかに。

「初夏の黎明に吹きおろす山風はさえざえとした気流に水分を孕み、頂を覆う這松の新緑あざやかな葉叢に一つの鈴をつけるように露を結びながら低く重たく谷間に這いおりていく」
という出だしから物語は始まる。これが本当にファンタジーなのかと思えるくらい、あまりにも文学的すぎる言い回し。

地域設定はなんとなくヨーロッパ風なのだが、中国の史実を伝えているかのような、なんとも不思議な世界だ。たくみな話術と緻密で破綻のない筋立て、波乱万丈で躍動的な展開。詳細な情景描写と心理描写、すべてにおいて高田大介の作品は度を超えている。

最初はカタカナで書かれた登場人物の名前がなかなか頭に入ってこない。はて、こいつは「いいもん」だったか「悪もん」だったか。今回新たに設定された舞台と人間模様もかなり複雑。その辺を作者得意の容赦ない書き込みでたんたんと描いている。どうしてこんなにも次から次とすらすらおもしろい文章が湧きでてくるのか・・・それを楽しむのも高田大介の魅力の一つ。

一進一退で進んでいく物語は、終盤に来て一気に終結へと加速度が増していく。詰めの書き込みはさらに筆圧が上がる。たたみ込ませる展開は京極堂を彷彿させる。そういわれれば、京極堂が現れなくなってから久しい。彼の活躍もまたみてみたいと思うのだった。



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