「永遠のゼロ」 百田尚樹 著 ★★★★★ 講談社文庫

投稿日時 2015-6-21 19:35:09 | トピック: 本棚

一昔前に大きな話題を呼んだ大ベストセラー、遅まきながら読んでみた。

森村誠一にも特攻隊をモチーフとした作品がいくつかあるが、それらはどちらかといえばオーソドックスな作りで、ある意味森村節に染まっているともいえ、それはそれとして一つのエンターテイメントとして十分楽しめるのだが、この作品はそれらとは異なる新鮮な筆致が印象に残った。

同じ情景を切り取っても、書かれる時代によって、作家の生まれ育った時代によって、描き方が変わってくる、自然にその時代に合った作品に仕上がってくる。時代が欲している作品が生まれてくる蓋然性と必然性を感じた。

森村誠一作品の感想でも触れたが、今現在、戦争を経験した人は高齢に達し、その方々から直接その体験談を聞くことはだんだん難しくなってきている。一次情報ほど貴重なものはなく、かといって、それを得ることが困難となれば、二次情報としていかに後世に残していくかが問題であり、この作品はそういう意味でも卓越した作品といえる。

最後の大どんでん返しには一本取られたかな、って感じ。

文庫版には私が敬愛してやまない児玉清さんの解説が載せてある。ラジオでよく耳にしていた、作品にたいする興奮と自分の気持ちを素直に表現する児玉さんの口ぶりが蘇ってきて、感慨もひとしおであった。



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