「Twelve Y.O」福井晴敏 著 ★★★

投稿日時 2015-12-12 17:37:36 | トピック: 本棚

この作品で福井晴敏は池井戸潤とともに同じ年に江戸川乱歩賞をとっている。

この小説には、符号、記号、鍵となる言葉がしばしば出て来る。果てはブックカバーのイラスト。読み終えるまで、それがなんであるか気にも留めていなかったが、読み終えてから本を閉じた瞬間に作品内の符号との一致に気付かされ、一本取られた気分になった。

米国の傘の下にある我が国の防衛構想が抱える矛盾とジレンマを背景にしたテロの物語。この作品が書かれたのが1994年、あまたある符号の中には、そのときに読んだ際には気付きもしかったが、今読み返してみると、はっきりと浮き上がってくるものもある。それを予見したというかモチーフとした本作品は20年前も今も少しも色あせることがない。それは、その年月の間日本の防衛構想は少しも進歩しておらず、矛盾を抱えたままであることを意味する。たとえば、「辺野古」が一つのキーワードとして描かれているが、今これを読んでいる時点で、現実の「辺野古問題」は重大な局面を迎えつつある。

最初に読んだときの内容はすっかり忘れてしまっていて、まさかこんな内容の本だったとは思ってもいなかった。安倍政権において安保法案が可決され、辺野古問題が耳目を集める中で、今この本を再び手にした奇妙な符号一致にまた驚かされたのであった。



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