「シグマ最終指令」上・下 ロバート・ラドラム 著 ★★★ 新潮文庫
投稿日時 2016-3-7 16:44:25 | トピック: 本棚
| ラドラムの作品は初めて、さていかに。 舞台がスイスやチューリッヒというのに新鮮味を覚えた。
秘密結社が世の中を動かしているというそら事はよく聞く話だ。 冒頭から引き込まれるが、場面の切り替えが早すぎて、というか、飛んでいるような気がして、挿話の間隔を埋めるのに苦労する。いったい何が進行しつつあるのか、この先どう展開するのか、まったく読めない。なんとなく事件の影に秘密結社の存在がみえてくるのだが、それと連続殺人がどう関わっているのか、その目的は何なのか、事件に巻き込まれた主人公同様読み手にもすっきりとしないまま、話は進んでいく。 第二次大戦中も、その後訪れた冷戦のときも、政治家や世界的な大企業のトップを操り、ときには内戦を起こさせて邪魔者を排除したりして世の中を動かし続けてきた秘密結社の所在が少しずつ浮き彫りにされてくる。
そこまでは、ついて行けたのだが、物語の終盤になって秘密結社の悪魔の所業が見えてくるにいたって、一気にトーンダウンしてしまった。なぜ悪魔の所業をここに持ってくる必要があったのか。秘密結社との闘いだけでは物足りないと作者は思ったのか、それともこれはうまい組み合わせだと思ったのか。それゆえに、話の持って行き方が複雑で凝ってしまった感が否めない。 映画007の台本になるような物語だった。
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