パナワンの成分 : ニンジン(人参)
投稿者: hangontan 投稿日時: 2006-11-14 16:55:10 (1159 ヒット)

ニンジンと聞いてまず頭に浮かぶ植物は野菜の人参キャロットでしょう。しかし、薬に使うニンジンとか、朝鮮ニンジンと呼ぶとだれでもこの人参のことを指していることに気付き、万病の薬、強壮強精薬のイメージを思い浮べます。野菜の人参は元の時代に中国を経て伝わった東洋系と江戸末期に伝わった黄色の洋種系とがあり、朝鮮人参の根に色、形が似ていたところから付けられたといわれています。
 薬用人参は「神農本草経」の上品に収載され、本草綱目では「長年月の間に漸次に長成し、その根が人間の形体のようで神秘なものだから人1、神草というのであって、1の文字は2に従う、いづれも浸漸(徐々に効力を現す)の意義である」とあり が画数が多いことから蔘、參、参の字を当てるようになったと記されています。朝鮮人参、高麗人参の名は満州から朝鮮半島の原産であるところから、英名のアジアティクギンセンはアジア産と中国名の発音から、属学名のパナックスは万病薬を意味しています。

人参の歴史
 前述したように中国最古の薬物書である「神農本草経」(漢代)の上品に収載され、かなり古くから用いられたことは確かです。この植物が描かれている本草書は宋代の「経史証類大観本草」(1108)の3州人参です。3州は現在の山西省長治県の上党郡にあたり、「証類本草」(1108)には上党産の人参が最上品であると記されています。現在ではこの地で自生することはなく、野生の人参はわずかに吉林省などで採取れ、高価で取引されています。 
 日本には天平11年(739)渤海文王の使者により進上品として渡来したのが最初で、朝鮮からは隋、唐の時代に何度も入った記録があります。渡来品を貯蔵してあったと思われる正倉院には北122生薬が野生人参であることが確認されています。
慶長12年には朝鮮より種子が献上されたことが記されていますが、実際に栽培が始まったのは元禄時代で八代将軍吉宗の時で、人参の輸入に当たっていた対馬藩の宋家に命じ種子、苗を入手し、日光で栽培化を試み成功しています。日光周辺で半官営による栽培が開始され、幕府から種が貸与されたことから人参の頭に御種を付してオタネニンジンとうい呼名が現在でも植物名として残っています。寛永の頃には栽培地が46ヶ村に及んだといわれ、多く生産されたときは清国に輸出されたこともあります。ちなみに朝鮮での栽培化は江戸末期になってから、中国では明治の始めなってからといわれています。現在ではこの栽培技術が会津、信州、出雲に引き継がれています。

植物の特徴
 中国東北部、朝鮮半島原産の多年草で、通常1本の茎を60冂に直立し、最大5枚(成長に伴って)まで付く葉は倒卵形の5枚の小葉を掌状に広げます。花は5〜6月頃、茎頂より長柄を出し、球状、散形に淡緑色の小花を多数付け、7〜8月には赤い液果が実ります。
 同属の薬用植物にはトチバニンジン(竹節人参)、アメリカニンジン(広東人参)、サンシチニンジン(三七人参)などがあります。

間違われやすい植物
 植物名にニンジンの名が付いた植物はセリ科とキキョウ科に多くあります。根がニンジンに似ていることから付けられたものと考えられますが、人参と同等の薬効は期待できません。
 セリ科には野菜のニンジンを筆頭にヤブニンジン、シムラニンジン、ムカゴニンジン、シラネニンジン、イワニンジン、ウバタケニンジン、ミヤマニンジン、カラフトニンジンなどがあり、他にトウキ(当帰)やミヤマトウキ(地方名イワニンジン)なども間違われやすい植物です。キキョウ科ではツリガネニンジン、ツルニンジンがあり、他にキキョウ(桔梗)やシャジン(沙参)なども根の形体が良く似ていてく混同され易い植物です。

生  薬
 根を秋に収穫し、調製加工します。加工法により大きく4種に大別されます。
々隼押〆を蒸して乾燥したもので、産地により加工法が違います。朝鮮産の高麗紅参、日本産の毛付き紅参などがあります。
白参 表皮を剥いで天日で乾燥したものです。直参は韓国産でひげ根を取除いて乾燥したもの。曲参は韓国の錦山製で太い支根を曲げて乾燥したもの。
E鯆未掘”夙蕕鯒蹐ず、ひげ根を取除き、熱湯に浸漬してから乾燥したものです。雲州製は島根県や福島県で行なわれた加工法。信州製は長野県で行なわれている加工法。
だ鹸海掘〆戮ずを原料にする日本古来の加工法。支根、ひげ根を取除き棒状に乾燥したもの。

薬効および使用法
 虚弱体質、筋肉疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え性に用いられる外、健胃強壮薬として配合剤に用いられています。以下多くの漢方処方にも健胃消化薬、止瀉整腸薬、鎮痛鎮痙薬、保健強壮薬として配合されています。
―汁澗臺篥髻“莽回復又は食欲不振。
⊂柴胡湯 かぜの後の疲労感又は食欲不振。
人参湯 冷えを伴う胃腸虚弱、胃もたれ、下痢、吐き気又は胃痛。
で門冬湯 痰の切れにくい咳。
ハ桟子湯 胃腸のもたれ、食欲不振、胃痛又は吐き気。

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