投稿者: hangontan 投稿日時: 2007-1-4 6:56:58 (1658 ヒット)








獣胆を古代より使用することは西域(ギリシア、インド、サラセン)に見られ、唐代に西域の医薬品の使用が伝来したことを想定することができます。熊胆の漢薬製剤中の使用も民間療法的なものが多く、唐・宋代を経て漸次丸薬などの製剤に配合されるようになりました。日本では江戸時代初期に「クマノイ」として頻繁に使用されるようになり、特に配置薬製剤には欠くことのできないものとなっています。

主成分はタウロ−ウルソデスオキシコール酸で、これをアルカリ分解するとタウリンとウルソデスオキシコール酸(ウルソデオキシコール酸)が得られます。このウルソデオキシコール酸は合成した物もあり、胃腸薬に多数配合されています。

薬理作用は利胆作用が主で、胆汁酸の肝内濃度上昇と共に胆汁流量が増加します。また、コレステロール系胆石溶解作用、腸の鎮けい作用、ヒトMT−4細胞におけるHIV−1増殖の抑制なども報告されています。
ウィルス性、アルコール性、薬物性、自己免疫性肝炎は、人類の健康を脅かす多発性疾患であり、その一部は肝硬変・肝がんに進展します。また近年肥満などによる肝臓病(NASH)も急増しています。各種肝臓病の基本治療には肝臓保護剤を使用しています。ウイルス性であればインターフェロンとレベトール(Rebetol)などの抗ウイルス剤がまず挙げられます。現在使用しているリバビリンとインターフェロンの併用療法はHCVに有効率をあげていますが、副作用が大きな問題です。通常副作用として溶血性貧血、倦怠感、疲れやすい、めまい、息切れ、動悸、頭痛、黄疸、重い血液成分の異常、発熱、喉の痛み、だるい、皮下出血(青あざ)や歯肉からの出血、抑うつ、憂うつ、呼吸困難、喀痰増加、筋肉痛、関節痛、食欲不振、腹痛、吐き気、不眠、眠気、神経過敏、脱毛などがよく見られます。したがってこの療法は体力が弱い方には不向きです

肝臓保護剤は殆どが漢方あるいは漢方に由来するものです。一般的に用いられているものとしては、小柴胡湯、ウルソ、強力ミノファーゲンなどが挙げられます。小柴胡湯(しょうさいことう)は肝機能の改善やガン細胞の抑制に効果が認められてから、日本では肝疾患治療薬として急速に脚光を浴びるようになりました。しかし、これは千七百年も前、後漢時代の名医張仲景が小陽病に対して考案した処方であり、すべての肝炎に適応できるわけではありません。少なくとも活動期の肝炎には相応しくありません。

  ウルソ(ウルソデソキシコール酸の製剤)は、漢方薬の熊胆(ユウタン)から化学合成した胆汁酸製剤です。漢方医学では昔から利胆薬と胃腸薬として熊胆を使っています。 熊胆の主な成分は胆汁酸であり、胆汁の流れをよくし、胆汁鬱滞を除き、肝機能を改善する効果があります。又、脂肪の吸収をも助けることで、胃腸の機能を改善することができます。ウルソはユウタンの成分のひとつに過ぎず、副作用も見られます。
 強力ミノファーゲンの主成分はグリチルリチンです。グリチルリチンは漢方生薬の甘草(かんぞう)から抽出されるもので、抗炎症作用、免疫調節作用、肝細胞保護作用などがあり、さらに抗ウイルス作用もあると指摘されています。適応症は初回インターフェロン療法の無効例、肝硬変、副作用でインターフェロンが使用できないケース、高齢者、肝生検ができないケースなどです。副作用は血液中のカリウムの低下、ナトリウムの上昇、体の浮腫、体重の増加などがみられます。

肝臓は強い再生能を持っていることが知られています。再生できない原因は十分に解明されていませんが、肝細胞の持続の自殺(アポトーシス)に関与すると考えられます。マクロ的に考えれば、肝臓の胆汁うつ、炎症物質の蓄積など肝臓の内環境・微小循環障害が主な病理状態です。

漢方のコツは多種生薬の配合です。1つの成分や単品の生薬では、症状の改善は可能ですが、体質の改善・病気の根治は不可能でず。証・体質の治療には、複数の生薬の集団的な力を必要とします。

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