富山のくすりの中の生薬 : サイコ(柴胡)
投稿者: hangontan 投稿日時: 2006-11-14 7:57:29 (1340 ヒット)

柴胡は神農本草経の上品に『茈胡』の名で収載され、薬能は「心腹を主り、腸、胃中の結気、飲食積聚、寒熱邪気を除き、推陳致新(新陳代謝)を主る」と記されています。名前の由来は本草綱目に「茈は古の紫の字で…。これはこの草の根が紫色だからで、今非常に良く用いられている茈胡がこれで、木をもって糸に代えそれをうけて茈胡と呼び慣わしている。」また別に「茈の字に柴、紫の2音がある。茈姜、茈草の茈は皆紫(し)と音じ、茈胡の茈は柴(さい)と音ずる。茈は山中に生じ、若いときは茹でて食用にし、老ゆれば採って柴(しば)とする。それゆえに地上部は芸蒿、山菜、茹草の名があり、根は柴胡と名づけられる。」と記されています。日本名のサイコは中国名の単なる音読みです。学属名のブプレウルムは負牡牛の肋骨の意で茎の特徴から、種名のファルカツムは鎌型の意で葉の形体に由来しています。植物名のミシマサイコの由来は過っては東海道沿いで多く採取され、三島に集荷されたものが良品であったところから名づけられました、昭和初期には絶滅状態になり、現在は栽培化されています。

 ミシマサイコと同属の植物は日本にレブンサイコ、ホタルサイコ、ハクサンサイコ等がありますが、何れも薬用としては使われていません。中国には多くのミシマサイコ属植物が自生しますが、日本に輸入されている柴胡はマンシュウミシマサイコで北柴胡、津柴胡の名で呼ばれています。

【植物の特徴】
 関東以西の日当たりの良い草原を好む草丈1mにもなる多年草ですが、乱開発、乱獲により野生種はほとんど絶滅状態になっています。葉は互生し、単葉で細長く、鎌状に湾曲します。他のセリ科植物の多くが葉の基部が茎を抱くのに対し、この種は抱きません。夏から秋にかけて復散形花序を頂生または腋生し、黄色の小花を多数付けます。最近では切花栽培も行われています。

【生  薬】
 秋または春に播種し、1年または2年目の秋に抜取り、茎を切離して水洗し、陽乾します。半乾きの時に形を整えてさらに乾燥します。太く、臭いが強く、質が柔らかいものが良品。
 主成分はサイコサポニンa,d、フラボノイド配糖体、ステロール類、脂肪油等。
   
【薬効および使用法】
 主に漢方処方に配合されます。
胸脇の熱を去り、胸中の痛み、ストレス、悪寒と熱が交互にきたり(寒熱往来)、脇の下がかたく張りみぞおちに物がつかえたような感じ(脇胸苦満)を治します。
_技湯 大便が硬くて便秘傾向のあるものの次の諸症:痔核、きれ痔、便秘。
加味逍遥散 体質虚弱な婦人で、肩がこり、疲れやすいく、精神不安など精神神経、ときに便秘傾向のある次の諸症:冷え性、虚弱体質、月経不順、更年期障害、血の道症。
柴胡桂枝湯 多くは腹痛を伴う胃腸炎、微熱、寒気、頭痛、吐き気などがある感冒、風邪の後期の症状。
ぢ膽童嫖髻,っしりとした体格で比較的体力があり、便秘の傾向があるものの次の諸症:胃炎、常習便秘、高血圧を伴う肩こり、頭痛、便秘、肩こり、肥胖症。
ナ簔羆弋づ髻仝亀い無く胃腸の働きが衰えて疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後の衰弱、食欲不振、ねあせ。
小柴胡湯 食欲不振、胃炎、かぜ、中耳炎

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